(イシスアセト王都の某所、家主が消えてしばらく経った薄暗い部屋。いつの間にか降り出した雨がしとしとと音を立てている。)
ミラ「……。……。……。(ベッドの傍に座り、上半身だけをベッドの上にうつ伏せに乗せている。静かに息をしているだけで寝ているのか起きているのかもわからない。)」
ゲラルト「(薄暗い部屋の中に何の前触れもなく現れた。僅かに魔術反応だけはあるが、それは並大抵の人間には感知できるものでは無い。コートの裾が揺れ、腰のベルトに差している刀が僅かに音を鳴らした。ベッドに突っ伏した状態のミラを見てどう声をかけようか悩んで、そのまま少し黙っていた。)」
ミラ「……!(僅かな物音に勢いよく顔を上げる。空気の動く感覚のないその現れ方に、それが”彼”ではないことにすぐに気付いて、音のした方を見た。)………。……た、……隊長……………。(目の前の長身の男を、赤く泣き腫らした目で見上げる。)」
ゲラルト「(ミラが起きていたことに驚いたが、それより見上げた顔、その表情に思わず一度言葉を飲み込んでしまった。)……ミラ。落ち着いて聞いてくれるか。(なるべく穏やかな声で、静かにそう切り出した。)」
ミラ「…………死んだの?(特徴的なオッドアイが、瞬きもせずにゲラルトをじっと見つめた。)……雨の音が酷くて起きたんだ。そしたら鍵が置いてあって。ああ、もう会えないんだ、ほんとうに、死にに行ったんだって、私、(大きな目に涙をいっぱいに溜めて、表情が大きく歪んだ。徐々に息が詰まり、言葉が途切れ途切れになっていく。)」
ゲラルト「ミラ。駄目だ、落ち着け。(ミラのすぐ正面に座り、大きな手でその背中を優しく撫で、何かのまじないのように背中をトントンと叩く。)……あいつは生きている。酷い状態ではあるが。」
ミラ「(大きな手が背中をさするのに合わせてゆっくりと息を吸って吐いて、徐々に浅い呼吸が収まっていく。ほっとしたのか、こてんと額を肩につけた。)……ごめん、もう大丈夫。ありがと…………。(鼻を抜ける独特の匂いに少し顔を顰めた。)……血の匂い……、酷い怪我してる……。」
ゲラルト「ああ、すまない……、(ミラに指摘されて始めて自分の怪我を気にした。失くしたの右の手袋も、引きちぎられるように開けられたシャツの襟もそのまま。)アイツに頼まれてな。治療も何もせずに来た…。(何かを思い出すように少し目を細める。)私は、大丈夫だ。お前は大丈夫か? ……吐くなよ?」
ミラ「(顔を上げたが、血の気の引いた顔は青ざめたまま。)今日は新月だから。私なんも使えないし、暴走する力もないよ。……あ、もしかしてフリ?吐こうか?(冗談を言って少し笑うような声を出したが。)」
ゲラルト「……。……。(自分たちが唯一の拠り所とした”あの能力”について全く無自覚なミラの言動に、思わず口を噤んだ。自分の口から知らせるべきでは無いと、咄嗟に判断した。)」
ミラ「ねえ。連れて行って。(ゲラルトの腕の辺りをくいっと引っ張った。)……死んでなければそれでいいってもんじゃないの。……ん。……。……心配だから。」
ゲラルト「酷い状態だ。見たらきっとつらくなるだろうが、……。(至近距離でミラの目を覗き込んだ。落ち着きを取り戻している様子を見て、少し距離をあけた。)」
ミラ「(じ、と視線を合わせて、静かに一度頷く。)いいよ、それでも。私に出来ることってそんなに無いから、せめて傍に居させてよ。(掴んだ手を離し、座った太腿の上に握りしめた両手をちょこんと置いた。)」
ゲラルト「お前は……分かってないな。(ふ、と短く息をつき。)私達がどれだけ多くのものをお前から与えられたか。そうでなければ、こんな不確定要素しかないなかで命を張ったりしない。(視線をふと外して、何となく窓の方を見た。王都中心部の雨も弱まり、そろそろ止みそうな気配がする。遠のく雨雲を一人、苦笑いで見送った。)」
ミラ「んん?そうなの?(少し首を傾げた。そのあとうんと考える素振りをしたが、思い当たるところが無いのかキョトンとした顔のま。) でも私、ドジだし、バカだし、アンタらみたいに強くないし、いつも護ってもらってばっかりだよ。」
ゲラルト「護るものがあるから、強くいられるんだ。己の復讐や欲望の為だけに、ここまでのことはできない。(珍しく、目を細めて優しげな顔をした。ほんの僅か、ゲラルトのことをよく知る人でなければ見逃す程の変化。)……まあ、ドジでバカなのは否定はしないが。」
ミラ「あは、ひっど……。(口元に手をやって、思わずくすくすと笑った)ほんと、真っ直ぐだねぇ。……。(つられるように、穏やかな表情を見せた。)」
ゲラルト「俺達も馬鹿正直でな。真っ直ぐ前を見て進むことしか出来ない。………育てた親の影響だろうな。(チラ、と視線だけミラの方を向いた。)ミラ、着替えろ。さすがにそのまま連れていく訳にはいかない。」
ミラ「(自分の姿を見て、こくこくと頷いた。)そっか、さすがに彼シャツ一枚だとマズイよね。すぐ着替えるから待って。(その場で服を脱ごうと裾を持ち上げようとしたが、)あっ、うわ 危な!!私今ブラ付けてなかったわ!!!」
ゲラルト「付けていれば大丈夫だというわけでもないが…………、(長めのため息をついて、身体ごと向きを変えた。)」
ミラ「やだなぁ、私の下着姿なんてもう見慣れちゃったでしょ? あーれ、どこかな……(キョロキョロと見渡し、やがてベッド付近の意味深な場所から下着を引っ張り出してきた。)」
ゲラルト「お前、絶対それ、アイツの前では言うなよ?(何となく自分の右手を広げて眺めると、あの雨ですら流しきれなかった血液が固まってこびり付いている)これくらいは洗っていくか……(すぐ傍でミラが着替え始めたのが少し気まずいのか、立ち上がって部屋の中を歩いていく。)」
ミラ「……あっ、隊長、洗面所入ったとこの戸棚は触っちゃダメだからね!?(下着のホックを後ろでつけながら、ハッと顔を上げ、大きな声で言った。)」
ゲラルト「ん? あー……これか、まあ、確かにミラは開けない方が良さそうだな。(姿は見えないが、水の音と声だけが聞こえる。)」
ミラ「えー……、何……?どういうこと……?(予想の斜め上をいく返事に思わず動きを止めて。)……着替えたよ。早く連れてって!」
ゲラルト「(部屋に戻ってきた。)焦らなくてもあいつは逃げたりしない。意識が無いからな……。 行くぞ。(ミラに向かって手を伸ばし、少し首を傾けるような仕草をした。早くしろ、と。)」
ミラ「うん。 ……あ、待って。(テーブルに置かれた部屋の鍵と彼の眼鏡を手に取り、愛おしむようにそれを眺めると、ぱっとゲラルトのほうへ向き直った。)うん。……早く、会いたいな。(差し伸べられた手をぎゅっと握った。そのわずか一瞬の後に、2人の姿は部屋から消えていた。)」
—
(イシスアセト王都を突然の暴風雨が襲ってから数日が経った後。ウライオス本部近くの病院にある特別室。)
マベ「……………………………。(力無くベッドに横たわっている。全身に様々な処置が施され、左目は大きなガーゼと包帯で覆われている。あれから一度も目覚めることはなく、ずっと眠り続けている。)」
ミラ「……。(その横で、点滴の繋がった手を握ったままぼんやりと寝顔を眺めている。夢と現実の境をさ迷っているようにも見えるその顔が徐々に俯き、こくりとしたところでハッと顔を上げて。)……う、寝そうになってた……。……。おーい……、そろそろ起きなよ……。……。(当然反応は無い。空いている方の手で眠る頬を撫でた後、身を乗り出し吐息がかかるほどの距離感で顔をのぞきこんた。ミラの長い髪がその頬に触れる。)」
マベ「…………………、(数日前よりは顔色も良くなり、眠る表情も穏やかになってきてはいるが触れるとまだ冷たさが残る。握られた手も顔も傷だらけで、普段は触られるとすぐに反応を返してくるのにぴくりとも動かない。ゆっくりとした呼吸の音だけが静かな室内で聞こえる。)」
ミラ「(じっと顔を覗き込んだまま、顔色を、肌から伝わる熱を、呼吸の音を感じて少し表情を暗くした。)少しは良くなってるかな。……。私も寝よっかな……。もうちょっとだけ、おやすみ……。(そっと触れる程度に唇を重ねた。)」
マベ「………………、(唇が重ねられる。ほんの僅かに睫毛が揺れたかもしれないが、片目だけが見えている状態のため気の所為にも感じるかもしれない。外では風が吹き始めたのか、窓枠が少し軋んで音を立てた。)」
ミラ「(そっと離れて、手を繋いだままベッドに両腕を置き、頭を乗せる。)……おやすみ。また、先に私が起きるのかなぁ。(随分長くろくに寝ていないのだろう。その表情には疲れが見える。すぐにうとうとし始め、ゆっくりとその目が閉じられた。)」
マベ「…………………。……………………。(しばらくして、風が強くなったのか窓枠が先程より大きな音を立てて軋んだ。春風のような不安定さで、今度は小刻みに小さな音を立てて窓枠が揺れる。)………………、(閉じられた右の瞼が小さく動いた。本来の利き手の指先がぴくりと蠢き、室内にも関わらず出入り口のドアが外の風に合わせてカタカタと音を立て始めた。)」
ミラ「……ん、……。……おはよ……(また夢と現実の境に入って、口の先が少しだけムニュ、と動いた後、小さく寝言を言った。部屋の中の変化は小さすぎて、今のミラには気付なかった。)」
マベ「………………、………………!(ミラが寝言を口にした直後、外の風がドウ!と音を立てて荒れ狂った。吹き抜ける風が僅かな隙間から室内へと侵入し、かき混ぜられた空気がマベとミラの髪をふわりと揺らす。)………………………ッ!(カッと目を見開いた。その瞬間、外の風も室内の風も収まり、天井を見つめるマベのやや荒くなった呼吸だけが取り残された。)……………、……………。(呆然としたまま身体を動かしかけて、その痛みに顔を歪める。そして感じる手の温もりに、おそるおそる顔をそちらへ向けた。)…………ミ…、…ラ………。(掠れた、ほとんど声にならない声。)」
ミラ「(風を感じてもぞりと身を動かした。)……ん、何……?(返事をしたが、それは恐らく夢の中の誰かに呼びかけられたと思っているかららしい。握った手が少し力を強める。意識は現実側に引き寄せられているが、疲れきった体と頭がなかなか覚醒しない。)」
マベ「(手を握る力が強まり、その温もりがマベの長かった眠りを少しずつ醒ましていく。)………………、(身体をゆっくりと起こし、自分が今どこにいるのか、どんな具合なのかを感覚で把握していく。まだその状態が不安定なことを示すように、外の風が窓をカタカタと小さく揺らす。)…………ミラ、…………ミラ。(完全に上体を起こすとまだ力の入らない声で名を呼び、もう片方の手でその髪や顔に触れる。疲労の色が濃く滲む寝顔に、およそ自分がどれだけ意識を失っていたかを察し。)………戻ったぜ、ミラ………(顔を近づけると、その額にそっと口付けた。)」
ミラ「……?(額に触れる感覚に目元がぴくりと動き、一筋だけその目から涙が落ちた。)…… ……。……!(急にはっと目を開けた。顔を上げると、何日も何日もろくろく寝ずに待ち望んだその光景が確かに目の前に拡がっているが、しばらく固まって声も出ない。)……っ、……あ、……おかえり!!(嬉しそうに笑うと、何も考えず身を乗り出してその体に飛びつくように抱きついた。)」
マベ「ただ、っ……!!…………ッッッ!!!!!(抱きつかれ反射的に抱き返し、一瞬遅れて全身に痛みが走って声にならない声を上げそうになるのを必死に抑えた。)……………。お……、おう………随分…待たせちまったみたい、だ、な………?(ミラの肩口に顔を埋めて痛みを誤魔化している。)」
ミラ「(ぎゅう~~~っとしばらく抱きついたまま鎖骨の辺りにくっついて何度か深呼吸して)……っぷは、……。あっ、ごめん痛いよね!?嬉しくてつい……、うふふ、(抱きつく力を弱め、眉を八の字にしたが、それでも嬉しい気持ちが抑えきれずにすぐに機嫌のいい笑い声が漏れる。)待ってたよ。ずっと待ってた。起きてようと思ったのに、寝ちゃっててごめんね。……。……。……。(少し黙って、嬉しさを噛み締めるように目を閉じた。)」
マベ「(顔を埋めたまま小刻みに肩を震わせている。笑っているとも泣いているとも取れるような動作。)………これくらい、どうってことねえさ……。お前の声、また聞けたからなァ……(顔を上げると穏やかな笑顔になっている。点滴や包帯の施された手をその頭と背中に回し、優しく優しく撫でて。)……心配かけたな。もう大丈夫だ……。……あァ、医者の野郎…好き放題俺の身体弄くり回しやがって、せっかくのお姫様の顔が見えねェってんだ……(自由の利く手で頭の包帯をずらし、左目のガーゼを音を立てて引き剥がそうとする。)」
ミラ「なにがこれくらいだよ…、何日寝てたと思ってんの。 ……心配、したよ。第一声で寝ぼけて「ゲラルト……」って言われたらどうしようかと思ってた。(努めて明るく、冗談を言いながら。笑顔に混じって時々複雑な表情がまじる。)あ、そう、目が覚めたら知らせてくれって病院の人に言われ………… ちょ、ちょっと待って何してんの!?駄目だよ!!(慌ててその手を止めようとする。)」
マベ「……悪い。(少し沈んだ声で、それだけ。それでも何故か表情は誇らしげで、安心したかのようにミラを見つめている。)………。……あぁ、隊長は……、お前のところに行ってやってくれって、俺…それだけ頼んで気を失っちまって……あいつも酷くやられたのによう……(あまり子細を話さないよう考えながら言葉を選んだ。)……お前の顔、よく見てえんだよ。まだ魔力が安定しないから、顔になんか貼られてるとわからねえんだ。(止めるのも構わず、ガーゼを外した。頭から瞼の上まで大きな切り傷を縫合した後が見えるが構わず、ゆっくりと目を開ける。)」
ミラ「んー……、あの人も酷い怪我してたね。けど、そのまま私んとこ来てくれて……無事だってことだけ、教えてくれた。ちゃんと後でお礼言っときなよ?(ふふ、と笑うだけでそれ以上は何も聞かない。)あ、うわ……。……う、……。(思わず少し顔を逸らした。)……痛そう、で、ちょっと怖い……。(ちら、と視線だけおそるおそる戻していく。)」
マベ「………ああ………。……あいつ、やっぱり凄えよ……。(つられて嬉しそうに笑ったが、顔を逸らすミラにん?と首を傾げた。)……あ、……あー……。悪い、……ゴメンな。怖かったな。(手で傷口を隠し、困ったように笑った。)……ほれ。怖いとこ隠したぜ。無理しないでそのままでいいから……、…………………。(ゆっくり開けたその左目が、薄く透き通った茶色から夜の帳が下りるように濃淡のわかりにくい瞳へと色を変えた。安定しないという言葉どおり、入口のドアが風でまた小さく音を立てる。)…………。……………。(目を細め、黙ってミラを見つめている。)」
マベ「………ああ………。……あいつ、やっぱり凄えよ……。(つられて嬉しそうに笑ったが、顔を逸らすミラにん?と首を傾げた。)……あ、……あー……。悪い、……ゴメンな。怖かったな。(手で傷口を隠し、困ったように笑った。)……ほれ。怖いとこ隠したぜ。無理しないでそのままでいいから……、…………………。(ゆっくり開けたその左目が、薄く透き通った茶色から夜の帳が下りるように濃淡のわかりにくい瞳へと色を変えた。安定しないという言葉どおり、入口のドアが風でまた小さく音を立てる。)…………。……………。(目を細め、黙ってミラを見つめている。)」
ミラ「……ここにいる間も、たまに顔出してくれた。マベさんのことじゃなくて私の事ばっかり心配してて笑っちゃったよ。(痛々しい傷跡を見てしまったことを誤魔化すように少し冗談を混ぜながら、傷を隠した大きな手にそっと上から触れる。)……ん。ちゃんと”見える”? 早く治りますよ、う、に、……? …………。…………。(目の色の変化に気付いたのか、じいっと見つめ返した。)」
マベ「…………。………それでいいんだよ。(意識を失う直前のやり取りを思い出しながら、それだけ言って柔らかく微笑んだ。)…………。ああ。…………。………そうだな。(手を握り返し、何でもないと言った様子でもう片方の手でガーゼを付け直した。)………。………まだ、ちィと調整が必要だな。こんな大怪我したの久しぶりだからなァ、こりゃ早く復帰しねえと面倒だぜ。感覚も狂ってねえか確かめねえとな……(言いながら右目でミラを見た。濃淡のはっきりしない普段通りの瞳だが、いつもよりずっと優しく、何かの感情が見て取れる。)」
ミラ「うん、2人とも言葉選びが不器用だから、そんなもんなんだろうね。(柔らかい表情につられるように笑った。)……復帰ねぇ。どうだろ。私はちゃんと治るまで安静にしてて欲しいけど、アンタら全然言う事聞かないからね。 (言うかどうか少し迷って暫く視線を逸らしてじっと固まっていたが、意を決したように口を開く。)今、目の色、いつもと違う気がしたんだけど……、本当に大丈夫なの?」
マベ「それを直す気もねえからな。……へへ。(頭の包帯を直し、何度か瞬きして視線を落とした。)………。………もしかしたら、簡単にはいかないかもしれねえな。…………。(命令ではなく私情で動いた自身の処遇について頭を過ったが、すぐに消えてしまった。目の前の、どうしても護りたかったものが、そんな些末なことなど掻き消してしまうほどに愛おしくて。)………。………ああ。………大丈夫。ちゃんとお前が見えたし、今も見えてるよ……。………。(同じように少し間を置いて、口を開く。)………お前、俺の目が見えたら、……嬉しいか?」
ミラ「そだよ、医者も言ってたよ。ただでさえ厄介な体質なのにまたたくさん摂取して……とかなんとか。(それを傷の程度の話だと勘違いして言葉を繋いだが、何となく雰囲気の違うマベの様子に少し首傾げて。)……え? どっちでもいいかな。あ、変な意味じゃなくて……、見えても見えなくても、私はマベさんが生きてることが嬉しいから。(少しの考える間もなくそう答えると、優しい目で笑って。)マベさんも私の色んなこと、受け入れてくれてるでしょ?それと一緒。」
マベ「そーか、あのクソ医者どもめ。後でとっちめてやらねーと。人のこと実験動物みてえにしやがるわ人の身体のことでけえ声で話しやがるわ、ったく……。……………。(半分冗談めかして言ったが、その笑顔に、言葉に、嬉しそうに右目を細めた。)……そっか。………さっきな。ほんの一瞬だけ、見えたんだ…。焦点もあってねえ、ぼんやりとした視界で、本当に一瞬だけ…。……でもな……なんだか……妙な気分でよ……。(手をミラの頬へ伸ばした。)」
ミラ「……。(言われたことの意味がすぐには理解出来ずに暫く黙っている。)……うそ……、 …………。こんな寝不足で史上最凶にヤバい顔してる時に限って!?もー、もっとバッチリ可愛くキメてるときにしてよねww ……、……。(いつものミラらしい様子で明るく笑い飛ばしたが、すぐに静かになり、少し複雑そうな顔をしてじっとその目を見つめた。)そういうこと、たまにあるの?」
マベ「ッ、(伸ばした手を思わず戻して吹き出した。)……そこ気にするのねオマエ……wwちょ…、傷にクんだけど……ww………。(可笑しそうに笑って、見つめ返した。)…………。……いや。(少し間を空けて首を横に振った。)……奇跡みてえなもんだと思ってくれ。それこそ、新月の名残りだとでもよ。」
ミラ「え!?気にするよ!?だって、せっかくだからいちばん可愛い私を見て欲しいじゃん!! ……んー。ふふ、そっかあ。マベさんの言ってた通りだね。逆夢、って言うんだっけ?(に、と笑って。)……で?ねえねえ、ご感想は?」
マベ「…………お前はいつだって、一番可愛いよ。(微笑み、左目をガーゼの上から押さえた。)……ああ、そんなこと言ったな。……ミラの夢のおかげだな。(どこか遠くを見つめるような複雑な表情をしたが、それはほんの一瞬のこと。困ったように笑ってみせた。)……それが、期待させて悪いんだが……。お前の姿が1秒でも見られて嬉しかったんだが、もっと見たい、とか、ずっとこうだったら、とかはあまり思わねえんだ。まるでずっと前から、お前の姿が見えていたような気がするんだ……。『今あんたの世界には私しかいないんでしょ』って言ってくれた、あの時が一番嬉しかった……。」
ミラ「なにそれ。そこは嘘でも「想像通り可愛かった♡」って言ってよねw (目を伏せがちにして、いつか話したことを思い出した。)あー、言ったねえ。世の中的には普通の愛し方じゃないのかもしれないけど……私はいつだって誰かの代わり、何かの代わりだったから、世界でたった一人の私になれた気がして………………。だから、見えるのも見えないのも関係ないんだよ。私は、今のままが好き。(ふと目をあげるとその目は潤んでいて、瞬きをすれば涙がこぼれそうなのを堪えている。)」
マベ「ンン……(点滴の刺さっているほうの手で頬を搔いた。)……可愛いとかそういうのじゃなくてな。もっと他の言葉で言いたいんだよな。…………。…………俺にとってお前は、誰かが代わりになれるような存在じゃない。この世でたった一人の、初めて本気で愛した女なんだ。(片目をしっかり開いて、濃淡の分かりづらい、それでも強い意志を持った瞳で見つめた。そっとその頬に手を当てる。)……きっとこの先も、そう思わせてくれるのはお前しかいない、ミラ。………大好きだ。(優しく微笑んだ。)」
ミラ「……わ、(何か言おうとしたが、唇が震え、ぎゅっと唇を噛んだ。)……あの、(また言葉に詰まって、とうとう堪えていた涙がはらりと零れ落ちた。)帰ってきたら、いつでも笑って迎えようって決めてんの……、けど、……けど、ほんとにつらかったよぉ……、(冗談を言ったり、いつものように笑ったりして誤魔化していた感情がどんどん溢れ出していく。)絶対泣かないって決めてたのに、なんで今そう言うこと言うのかなぁ……もーーーー、ばか……、本当は隊長のほうが好きなくせに……(子供みたいにぼろぼろ泣きながら、本音を包み隠すみたいにどうでもいいことを言って八つ当たりしている様子。)」
マベ「(その様子にはっとして、捲し立てるミラを止めることもせず見つめた。)…………ごめん………。(ぽつりと呟くように謝った。包帯が巻かれた手の甲でそっとミラの涙を拭う。)…………泣いてくれ。隠さないでいい。俺は、わかっちまうから…。もちろん笑ってるお前が一番好きだが、どんな感情もぜんぶ見せてくれ…。怒ってくれたっていい。呆れられたって仕方ねえ。……俺は、バカだからな。待たされるほうがどれだけ辛いかなんて二の次で、こうやって目が覚めてまたお前と会えた嬉しさに尻尾振っちまうくらいだから……。(困ったように笑って)……言いたいこと、言えよ。な?」
ミラ「後ろ振り返らないのが、まっすぐ前見て死にに行けるその潔さが好きって、それは本当なんだよ。でも、……でも、私もこんなに好きになれる人にはもう出会えないから……。(しばらく俯いて黙っていたが、意を決したようにまた口を開いた。)今だけ……、もう二度とこんなこと言わないから、許して……、 (また何度か言葉を詰まらせて、震えながら本音を捻り出すように声を出した。)…………死なないで…………。必ず生きて帰ってきてよ…………。(そこまで言うと両手で俯いた顔を覆った。)」
マベ「……………………………。(ずっと黙ってミラの言葉を聞いていた。いつの間にか外の風は穏やかになり、何事もなかったかのように静けさを取り戻している。)…………。…………お前のためなら、どんな戦場からでも帰ってきてみせる。…………大丈夫だ。今度は、今のお前の言葉を思い出しながら戦える。守るものがあれば、俺は強くなれる。………。(ふいと顔を近付けた。)………辛い思いをさせるけどよ。……これからも、……待っててくれるか……?」
ミラ「ごめんね、こういうの邪魔になるってわかってるのに…………、(ふと顔を上げると寝不足で泣いてひどい顔をしている。じっとその言葉を咀嚼するように考え込んでからこくりと一度頷いた。)ほんと、まっすぐなんだね……。(濡れたまつ毛を少し伏せて、ほぼ同じことを言った2人のことを思い出して困ったように笑った。)……うん。当たり前じゃん。いつまでも待ってる。」
マベ「邪魔じゃねえよ。ほら、お前が待っててくれるって言ってくれたから、また強くなったぜ俺。(その顔に屈託なく笑い返した。)………いや、………。………ようやく本当に前向けた気がする……。………俺はまだ、これからだ。………。……………なあ。帰ってきた騎士様に、お姫様のキスくれよ。とびきりのキスをよ。」
ミラ「帰るとこがあるから、生きて帰らないとって思うの? 私、いつも待ってることしかできないって思ってたんだけど……、それで力になれるなら、何度でも言うよ、おかえりって。(こつん、と静かに額を合わせた。互いの息がかかって少しくすぐったそうに目を細めた。)……いいよ。でも、”その先”は我慢できるの?」
マベ「おう。(大きく頷いた。)……帰るとこがあるから。待ってくれてる奴がいるからってな。大切な奴を悲しませたくねえしな。………そういやァこんな話、前にしたな……。(額がくっつき、温かさにくすぐったそうに右目を細めた。)………あー……、(少し目を逸らしたが、すぐに戻した。)………我慢する。できる。俺つえーから。なっ?(子供のような言い草で無邪気に笑った。)」
ミラ「したよね、初めて部屋行った日。あのとき色んな話したのがすごく前のことに思えちゃうね……?(じっと目を見つめかえしたが、つられて思わず笑ってしまった。)えー、何それ……絶対我慢できないやつの言う台詞じゃん。 …ま、いいや。(両頬にそっと手を添え、首を少し傾けて軽く口付けた。)……ん、(間を開けずにもう一度、唇で下唇を挟んで甘噛みするようにして口付ける。)」
マベ「……そうだな……。あれがなかったら、”こうはならなかった”かもしれねえな…。…本当に一つ一つの出来事が俺にとっちゃ、ーーーー。(ミラの手が頬に触れる。久しぶりの感触に目を細め、そのまま瞼を閉じた。)……………ッ、(一度離された唇に薄目を開けたタイミングで二度目のそれを受ける。下唇を甘く噛まれる柔らかい感触に、身体が少しずつ熱を取り戻していく。)………っは、………。(ぺろ、と小さく舌舐めずりを見せた。)………ずっと、あの可愛い顔でよう。俺とこーゆーコト、シてたんだな……。……たまんねェなァ……。(くっくっと少し意地悪そうな笑い声を漏らした。)」
ミラ「ん、ふ…………えー……、えっちな顔見れなくて、残念?(舌舐りをしたのを見て、さっき甘噛みした唇を舌で柔らかくつついて、ぺろりと舐める。頬を包んでいた手が、指先が僅かに触れているくらいの強さで首、鎖骨、胸、腹へとするすると撫でるように降りていく)…あ。そっかそっか。我慢だったねえ。(その手をぴたと止めて笑った。)」
マベ「……ン。(少し考えた。)そうだな。我慢だ。”その先”はな。…でもキスの礼はするぜ?(唇を舌でつつかれぴくりと右目を細める。身体を微妙な加減で這っていく手が止まったところに自分の手を重ね、口の端を上げて笑った。)……こういう時くらい、もっと真面目になったほうがいいのかもしれねえがな………、……俺の性には合わねェや……、………!!(噛みつくように唇を奪った。眠っていた数日間を一気に取り戻そうとするかのように性急に舌を深く挿し込んでいく。密着するその身体は一気に熱を取り戻し、隠された肌に触れようとその手を服の中へ捩じ込もうとする。)」
ミラ「(大きな手が重なるその感触が嬉しくて、優しく微笑む。)今って1回しか来ないんだから、馬鹿みたいに真面目になったって仕方ないよ。欲しいものは欲しい時にそう言わなきゃ……(差し込まれた舌を一度ちゅっと軽く吸って、その長い舌に自分も舌を絡ませるが、思いがけず服へと入り込んできた手に驚いて、思わずぎゅっと掴んでしまう。怪我をしていることをすぐに思い出してその手の力を緩め)……んっ!? ぁふ、……ぅえ、へ、……ひぇ、(何か言おうとしているが当然上手く喋れるわけもない…)」
マベ「(舌使いもその手の触れ方も普段より荒々しく、それと同じくらい優しい。激しく動き手を掴まれて身体中を軋むような痛みが襲っても構わず続け、暫くしてようやく唇を離す動きを見せた。自分がされたのと同じように下唇を甘く噛み、ちゅ、と音を立てて離した。)………ン…………、…………!(止まらなくなりそうな手の動きは理性で抑え込んだ。目覚めてからずっと抑え込んでいた激情をひとしきりぶつけ終わると、至近距離で見つめ合って。)………続きは、帰ってからな。………我慢できるか?(目を細め笑った。)」
ミラ「(必死に背伸びをして食らいついても、だんだんと自分のペースを乱されて飲み込まれるようにされるがままになってしまう。小さく声を漏らしながら、背中にふわふわした感じを覚えたところで唇が離された。)……ぁ……のさぁ…………(責めるような声でぽつりと呟いた。膝同士を擦り合わせるように足を動かす。)もーーーー……、いいよ私、鍵持ってるし、続きは帰ってから1人でするから。枕勝手に借りるから。(ぷん、と拗ねたようにそっぽ向いた。)」
マベ「(拗ねたその横顔を愛おしそうに見つめた。)ごめん。悪かったって。俺が我慢できねーだけ。つーかお前、俺の枕オカズにしてんの?まァいいけどな…(点滴の刺さっているほうの手の甲を見て、フムと頷き。)んじゃ外泊しよーぜ、行きと帰りのぶんの魔力くらいはあンだろ。」
ミラ「(ちら、と拗ねた目で見て。)俺つえーから、とか言ってたの誰だっけぇ……。冗談に決まってるでしょ、寝てるといつの間にかうつ伏せにはなってるけど……。……。……は!?ダメに決まってるでしょ!?そんなボッロボロの身体で何考えてんの!? (はあ、とため息をついて心底呆れたような顔をする。)……病院の人呼んでくる。起きたら教えてって言われてるから。(言い終わると同時にすっと立ち上がる。)」
マベ「(困ったように笑って)そのはずだったンだけどなァ?……やっぱ、ほんの少しでも、見えたらよう……。……………。(拗ねた様子で立ち上がるミラを顔を上げて見つめた。そのまま見送るかと思いきや、手を伸ばしてその腕を掴もうと。)…………な。……もう少しだけ、待ってくれねえか?」
ミラ「またそうやって自分の……(珍しく上から覗き込むその顔が何となくいつもより無垢に見えて、言葉が途切れてしまう。)……。……何?人呼びに行くだけだよ。まだ私暫くここにいるつもりだし。また焦らして帰らせるくらいならなんにもしないでよ?」
マベ「(片目しか見えない傷だらけの顔でじっと見上げるその表情は、どこか嬉しそうでもあり心なしか切なさも滲ませている。)…………ろくに寝てないんだろ?俺の隣でちょっと眠れよ。……少しの間でいい。一緒に目瞑って、二人で同じ夢見ようぜ。お前が目を覚ますときに、俺も隣にいたいんだ…。……なにもしないからさ。……ああ、……いや……。……手くらいは……、……握っちまうかなぁ……?(苦笑いし、身体を引きずるようにしてベッドの真ん中より端へ移動しようとする。特別室用なのか、通常より余裕のあるサイズ。)」
ミラ「…………………。(その提案をじっと聞いている。)……うん。眠いんだけど、ほとんど寝られなくて。………あは……、変なの……、隣にいたって同じ夢見れるわけじゃないんだよ。 ……。(する、と布の擦れる音がして、短いパンツをはいているミラの膝がベッドに乗せられる。)……私も意識手放してるときに握っちゃったらごめんねぇ♡ なんてね。」
マベ「俺の目だって見えたんだ。同じ夢が見られるかもしれねえぜ?……どんな内容かは、わからねえけどな。(迎え入れるように、ミラのほうへ身体を向けた。露出している肌のほうが少ないほど寝間着の下は包帯で覆われているが、動きを見ても一般人より遥かに回復が早い。)………握ってもいいぜ?どこでも。(に。と無邪気に笑った。点滴とは逆の手で、ぽんぽんとシーツを叩く。)」
ミラ「えー、どうせ私が見る夢なんて、ロクなんじゃないよ。(ほんの少しだけぎこちなくベットに乗ると、隣にぴったりくっついて横になった。)……嘘つき。一つだけ絶対握らせてくれないもの、あるくせに。(無邪気に笑ったその顔が愛おしくて、でも少し気恥ずかしくて、顔をうずめてしまう。)」
マベ「………………。(マベにとってはつい先程くらいの、あの新月の夜の記憶が蘇った。ミラの見た夢から始まり、たった数時間の中で起こったたくさんの出来事と激闘が目の奥で再生され、右目を瞑った。)……………。…………いや?(ふと目を開け、微笑んだ。)ろくでもないと思ってた夢に救われることだって、あるかもしれないぜ?(点滴のついていない腕を回し、自分の胸に埋めた頭を優しく撫でる。)………ん?そんなモンあるか?」
ミラ「わたし、夢なんて信じたこと…………。(ない、と言いかけたところでその先を言うのをやめてしまう。ふあ、と欠伸をしたあと、頭を撫でる手が優しくて、心地よくて、すぐに瞼が重くなっていく。)……んー……飼い主にだけ、握らせてるのが、あるでしょ……。わたし、…………ぅん……、ふぅ…………(まだ何か言っているようだが、言葉として意味を成していない。)」
マベ「…………。……いつか、信じたいと思う夢が見られるといいな……。(本当に心から、そう願った。)……怖い夢見ても安心しな。俺達が護ってやるから……。(額から前髪を撫でつけるように、優しく撫で続ける。あの夜、家を出る前に感じたのと同じ感覚を味わえる喜びに、密かに胸を震わせた。)…………ああ、(困ったように小さく笑った。)………狂犬の手綱ってことか…?………あれはな、手綱っていうか、………。………。(眠りに落ちていくミラに目を細めた。)………ずっと待っててくれて、ありがとう。おやすみ。………(耳元で何かを短く囁いた。すぐに背けた顔が、少し赤くなった。)」
ミラ「…………うん、(起きているのか寝ているのかは分からないか、目を閉じたまま幸せそうに笑った。)」