07.「建国祭」人質解放 SideMM

(イシスアセト建国祭。とあるオークション会場 一階裏口通路)

マベ「(ゲラルトと別れて暫くの後、ゆっくりと、しかし速く、流れるような身のこなしで目的の場所へと進んでいた。)……………チッ。(目の乾きを覚え、首から提げていたゴーグルを装着する。走りながら自身の周囲に風の糸を張り巡らせ、少しでも引っ掛かれば警戒状態へ移行するつもりだ。薄暗い内部も、視力が無いに等しいマベにとってはあまり気にはならない。)」

マベ「(人質のいる階のはずだが人気がない。フロア全体に風を張り巡らせれば人間の動きは感知できるが、目的地に到着する方が早い。)…………臭うな。(面白くなさそうに。通路を抜け、いくつかの角を曲がり、もう少しで目的の”感知した場所”へと辿り着く。)」

ミラ「(後姿で、通路の角からその先を覗き込んでいる。どうやら目的の場所がすぐそこにあるらしいが、気配を殺したままそこから全く動かない。)……。」

マベ「(ミラの後ろ姿を”捉えた”。音もなく背後に近づき、急に起こった風の流れで自分が到着したことを告げた。)…………無事か。(自身も気づかれないよう身を隠しながら。)」

ミラ「(あまりに無音だったため、全くノーマークで声をかけられた。後方にはそれなりに注意を払っていたはずなのだが。)……っふぁ!?(変な声出た)」

マベ「バッ……!!(後ろから手でミラの口を塞ごうと。)……変な声出すんじゃねェ……。よう、早かったじゃねえか。」

ミラ「……んぐっ…。(咄嗟に口を塞いだ手に自身の両手を添えた。誰が来たのかは理解している。大きくこくこくと頷いた。)」

マベ「……よーしイイ子だ。手ェ離すから、お前も離せ。(耳元でそっと囁くように。)どうした。パスコード代わりに謎解きゲームでも置かれてて解けねえのか?」

ミラ「……っ…ん、(ぴく、と少し身体が強ばり、手をぺちんと一度叩いてから離した。)」

マベ「(叩かれたことも意に介せず、ちょっと身体を離した。ん?という顔をしている。)」

ミラ「うー…ビックリした…、(背伸びして、耳打ちするような格好になって、ごく小さな声で。)もうちょっと優しく登場してくれない……? 見張りが前に立ってるからここで待ってた。私ひとりで行かない方がいいでしょ?」

マベ「どういう登場の仕方が優しいんだよ。そっと抱き締めて頬にキスでもしろってか?(同じく小声だが落ち着いている。ミラの言葉に、ふっと目を細め。人数や通路の形状などを、風で把握しようと。)」

ミラ「はぁ…?やれるもんならやってみろよ…。(少し不機嫌そうな声。)しばらく見てたんだけど、前に立ってる2人だけみたい。 捕まってる人たちは分けて入れられて鍵もかけてるし、意外と手薄だね。そんなもんなのかな……。」

マベ「その話は後でな。まずは白馬の王子様を心待ちにしているあっち(人質たちのいるほうを親指で指して)からだ。ほー、同じ牢には入れてないのか。厄介だな。……普通の人身売買とは違うきな臭さを感じる。お前なんか知らねえのか?」

ミラ「ひくわー…、(少し黙って考えた。)今回集められてるのは特殊能力者だけだよ。どうもツアー装って国外から来た子もさらってるみたい……、そのかわり、人数は少なめかな。(少し言葉を選んでいた感もある。話せる範囲で話したという感じ。)」

マベ「(クッと小さく笑った。この状況下で恐ろしい程落ち着いている。)……………ふーん。そうか。(ミラの説明に一応納得したという顔をしてみせた。)……さァて。つまりはこういうことだな。俺はあのボンクラの見張り2人を寝かしつけ。お前は人質の捕まっている部屋の鍵を開ける。あとは俺が人質を安全な場所まで誘導して、お前も一緒に逃げればいい。」

ミラ「ごめんね、……話しすぎるとあの人に怒られるから。全然応答しないけどね。聞かれたくないことしてんでしょ、今頃。 (こく、と頷いた。)いいよ、今この場ではアンタに従う。」

マベ「いいんだよ。俺はまだそこまでに至ってないって、それだけの話だ。(ふっと一瞬、遠くを見つめるような顔つきになった。)……ああそうだ、お前、隊長にアレ話しただろ。ねちっこく言われたぞ。もうこれで貸し借り無しでいいだろ?(と、そこまで言って牢の方へ向き直る。片方の足を前へ出して体勢を低くし、太腿のホルスターに差したナイフに手をかけようとして。)……ちなみにお前、流血沙汰は苦手だっけか?」

ミラ「アレ?んと、なんのことだっけ。(少し首を傾げた。) 人並みだよ。この場に来てる時点で覚悟はしてる、けど、……好きではないよね。いいよ、遠慮しないで。(横に流していた髪をするりと後ろにやって。そのまま手を胸元にやって、少し息を吸って、吐いて。)」

マベ「俺がお前の尻触ったって話だよ。ねちねち言うわ人の話も聞かねえわで…くそゲラルトめ。(悪態をつきつつ、心の準備を整えるミラの様子には少し笑ってみせた。)………了解、まあ見とけ。いつも人の金で酒飲んでるクズみてえな男がよ。今だけ白馬の王子様も真っ青になって逃げ出すような、騎士様になるからよ(左右の太腿のホルスターから一本ずつ大振りのナイフを抜き、切っ先が後ろを向くように構え、飛び出した。既に展開していた魔術を変化させ、追い風とともにダイナミックに飛び出し見張りの一人を蹴飛ばそうと。)」

(見張りの一人が気付いて咄嗟に腕を前に構えて蹴りを受けるが、あまりの勢いに後方へ吹っ飛ばされた。あまりにも一瞬だったため声を上げる間さえなかった。)

「貴様、何者だ!?(もう1人の見張りが手を前方へ上げる。足元に陣が展開してから、バラバラといくつか浮かんだ光の玉が矢のように変化して一直線に向かってくる。)」

ミラ「もう気にしてないし ……クズみたいな男だって自覚はあるんだね。……。はいはい、頑張ってね、正義の騎士様。(興味無さげにぷいとそっぽ向いて、見張りがマベの方へ気を取られている間に牢へと近づき、ざわつく牢内ににこりと微笑んだ。)…今、出してあげるからね。安心して。」

マベ「ッハハァ!!毎度お馴染みのセリフだなァ!?えェ!?(一人を吹き飛ばした勢いそのままに地面に着地し、もう一人の方に顔を向ける。放たれた光の玉が矢となって放たれると跳躍し、壁を蹴り、空中に展開させた自身の風で身体の向きを変えて回避する。) テメエみてえな三下に名乗る名前はねーよ、バァーカ!!(回避しながら見張りのほうへ肉薄し、ナイフの柄で殴りかかって昏倒させようとしながらミラのほうへ顔だけ向けて、)ーーーーミラ!!急げ!!」

「お前、まさか―――、(言いかけたがその名の一文字目を言う間もなくナイフの柄で殴打され、その場に崩れた。)」

ミラ「(閉じた目を開けると、知らないはずの解除コードを細い指先で入力していき、1つ目の牢の鍵がカシャリと開いた。ふ、と目を細めて笑って、するりとまた次の牢へ移動して。)……あのねぇ、急げって言われても、見るのに時間かかるの。時間稼ぎがアンタの仕事でしょ。(同じように2つ目の鍵に手をかけ、目を閉じた。)」

マベ「おいおい、そんなんで見張り代もらってンのかよ?良い商売だなオイ(倒れた男を見下ろし、顔を顰めた。すぐに1つ目の牢へ向かい、顔を覗かせる。) なる早で頼むぜ。………さあ、みんな出てきな。もう大丈夫だからよ。(たった今まで敵に見せていた顔とはまったく違う、優しい表情を見せる。)」

ミラ「(また解除コードを入力して、移動して。)ウライオス基準で物言うのやめなよ。知ってるでしょ、”陣無し”は普通じゃないんだから。(ちら、と様子を見て少し手が止まったが、また手元に視線をうつして、目を閉じた。これが最後のひとつ。)」

マベ「どうでもいい。人質の命が最優先だからな。(ナイフをホルスターにしまい、扉を開けて外に出るのを促す。)……怖くねえから。なっ?よく頑張ったな。(一人ひとりを見るように声をかける。背中を見せているその間も、微弱な風をフロア中に吹かせて警戒は怠らない。)」

ミラ「(最後のひとつのコードを入力し、最後の扉はミラが開けた。扉に手をかけたまま視線を一度斜め下に落として、ふう、と息を吐いた。)……はい、これで全部。なる早料金請求させてもらうからね。チョコバーだっけ、1つ追加で……。」

マベ「(隣までやってきて、)ご苦労さん。よくやってくれたな。(あれだけの動きをしたというのに息ひとつ切らさず、穏やかな声で礼を述べた。) おう、わかったよ。味違いで買ってやらあ。料金からは引かねーから安心しろ(ハハハ、と笑って、最後の牢にいる人質たちを解放する。ふと空気の流れが、変わった。)」

ミラ「今は私のことなんか気にしなくていいよ。 ふー……、じゃあ約束の役目も終わったし私はどっか行くかなー。(ぱっと見上げて。) マベさんがちゃんと仕事してるとこ初めて見た。 ……あのさぁ、(言いかけて、何となくふと言葉を切った。)」

マベ「……おう?(なんとなく真面目な顔つきになってミラを見ている。分厚いゴーグルのせいで目線がわかりにくい。)そうだな。お互いこれが初めてじゃねえか。………何だよ?悪いが、あんまりここで話をしてるヒマはなさそうだ。(少し険しい顔つきになった。)」

ミラ「何?やだー、胸見てんの?(…) んー、さっき茶化したけど、戦ってる時のマベさん、結構よかったよ。……口悪いけど。(ふと笑ってから、その傍をすり抜けて来た方へ歩いて行こうとする。)こんなとこに長居しても仕方ないしね。」

マベ「見てねーよ、バーカ。こんなときに何言ってんだ(すごく真顔だったが、ミラの笑顔につられて目元だけは穏やかになった。)だろ?つーわけで、騎士様はこいつらを送り届ける魔術を使いますわ。(少し俯くと、ドウ!とマベの背後から、ミラの進む方向へ強めの追い風が吹き始める。人質たちがどよめいたが、大丈夫だと宥め。)……急げ。」

ミラ「こんなときだから、冗談のひとつも必要なんだよ。(振り返ると、風で長い髪が靡いた。) 私はまだやらないといけないことがある、……かも。 大丈夫だよ、ほどほどにするからさ。」

マベ「………フン。(悪くない、といった感じで鼻を鳴らした。)この追い風に乗って走れば出口に着く。外にウライオスの隊員が控えてるから、そこまで走れ。……お前らも行け!ここは俺が引き受ける。(と人質に指示を出し、彼らが走り始めるのを確認して再びミラに向き直る。)……あんがとよ。無事でな(に、と笑った。)」

ミラ「仕事頼まれたから当たり前のことしただけ。ここまではアンタらの指示通り動いたけど、ここから先は私の仕事だから。(また背を向け、2、3歩歩いたところでふと歩みをとめた。気だるそうに開いたままの扉に手をついて)……え、何? ……なんか言った……?」

マベ「あんでもねえーよ(とっくにミラには背を向けており、ジャッ、と音をさせて再びホルスターからナイフを抜き構えた。)……風の糸に引っかかりやがった。もう時間があまりねえ。(張り巡らせていた自身の風に異変を感じ取り、ゴーグルの奥で目を細めた。)おら、行けよ。」

ミラ「……は? あれ、違うな、何か勝手に見えて―――、(電流でも流れたかのように身体が跳ねて、ばっと扉から手を離し) あ゙っ……う……!! その名……(両手で耳を塞ぐように頭を抱えた。口が「いや」と動いたが、声は出なかった。)」

「(何も無い空間から”何の予備動作もなく”無数の手が伸びて、ミラの首を掴んで壁に押し付けた。)……おかえり、”カミラの子”。(ハッキリとそう聞こえた。)」

マベ「ッ!!!(ミラの異変に気づき振り返った。ちょうど彼女が無数の手によって壁に押し付けられたところで、飛びかかるようにその一歩手前まで近づいたが)…………!?(突然聞こえた声。その場に留まり、構えを崩さずに見えない空間を睨みつける)」

ミラ「私が来ること分かってて… 扉を開けること分かってて、ってこと……、お前ら何のつもりで、(目を開けて、苦しそうに言葉を吐き出した。)」

「(手だけの状態でミラの首と両手首に拘束具をつけて、)大丈夫、メイン商品に傷は付けない。”VIP”に高値で売れることが確約されてるから生け捕りなんだって。(地下なのにミシミシと地鳴りのような嫌な音がする。)」

ゲラルト『マベ、始末しろ!』

マベ「んだと……!?(聞こえる声にギリ、と歯噛みした。そして続く地鳴りーー)ーーー!!!!(そこへ、ゲラルトの声が聞こえた。ドォン、と地鳴りを吹き飛ばすような轟音とともに、圧縮された空気の壁がマベを中心に展開し放たれた。見えない壁は通路を破壊しながらミラだけを巧みに避け、手を”出処”ごと叩き潰そうとし、)…ォオオオオオッ!!!!(自身もナイフを両手に飛び込んだ。一陣の暴風のように、ミラを拘束しようとする手が離れていないならすべてを一刀両断しようと。)」

「(ミラを掴んでいた手は何の手応えもなく、ミラの姿と共にフッと消えた。)……何あの邪魔なやつ。いたの?(全く違う場所から声がして、破壊された地面からずるりと赤に近い濃いピンクの髪に金色の目をした少女が顔を出した。同時に無数の手が地面から生え、勢いよく襲いかかってくる。)」

ミラ「(いつの間にか移動させられていた。地面から生えた敵の姿を見て驚いている。)悪趣味だなほんと……。アレに飼われるくらいなら今ここで舌噛み切っ……(言っている途中で地面から生えてきた手が口に指を突っ込んだ。)」

ゲラルト『何のつもりだ。一年前の建国祭でも同じようにミラを、(突然音声がプツリと切れ、その先は全く聞こえなかった。)』

マベ「(見えない空気の壁を蹴りつけ、中空で方向転換した。声の主を音の方角で捕捉し、視線はミラから外さずに突進する。地面から生えてきた手を、疾走しながら両手のナイフで斬りつけ薙ぎ払っていく。)テんメェェエエエ!!ミラを返しやがれ!!   ッ、(ミラの口に指が突っ込まれたのを見て、眉間の皺が一層深くなった。また激しい音がしてマベのスピードが増し、通路ごと空を切り裂く衝撃波の風とともにミラに向かって飛び込んでいく。)ブッ殺すぞ悪趣味野郎!!」

「わあ、返せだって!やっぱり商品価値あるんだあ!(地面から手だけで這い出してきて鈴を転がすような声でそう言うと、華奢な手を前方に突き出す。)」

ミラ「……っ……!!(表情を歪め、僅かに首を横に振った。)」

(地面が隆起して壁のように立ちはだかったかと思うと、そこから隙間なく針状のものが突き出してくる。一瞬見えたミラの悲痛な表情は壁に遮られて見えなくなってしまった。)

マベ「ふざけんなッ!!そいつを何だと思ってやがるッ!!!(あと少しの距離で手を伸ばしたところで隆起してきた地面に阻まれ、攻撃の気配を察知し突き出てきた針をバックステップで躱した。着地しナイフを構え直す。)ミラ!!っ………!!(鼻腔をくすぐる匂いに、振り返った。)」

「へーえ、この子のこと、なぁんにも知らないんだあ~?(薄暗い通路の反対側からも壁が形成された音がする。) よそ見してていいの?死んじゃうよお? (壁がズルズルと引きずられるように動く。やがてその音は加速しはじめ、拷問器具のように、間に立つマベを串刺しにしようとする。)」

マベ「(甘い匂いのするほうを見て目を細める。)……………隊長。(ゴーグルを捨て、小さく舌なめずりした。口内から喉へ運ばれるほんの僅かな甘味にドクンと大きく鼓動が波打つ。)…クソガキが…(得物を固く握り締めた両手に”甘い匂いを纏った風”を結集させる。小さな放電を伴った風が巻き起こり、それは髪を大きく揺らし、破壊された壁の瓦礫が周囲を激しく飛び交うほどの暴風となる。)
そのクソナマイキな面、壁ごと叩き斬ってやっから覚悟しな!!!(片方のナイフを振り返ることなく自分の背後へ投げつけた。暴風は一直線となり矢のようにナイフを飛ばし、背後の壁の最も脆い部分を貫かんと。同時にマベも真正面へ跳び、風を纏った刃で縦一文字に壁を斬り裂こうと大きく振りかざした。)」

「(大きな衝撃とともに割れた壁の向こう、目を見開いて驚きを隠そうともしない。)な、な、何!?(展開した術を術者自身が放棄したことで、壁はどろりと溶けて元のただの床に戻っていく。体のサイズ感に不釣合いに小さい、まったく退化したような足を引きずり、また地面に潜って逃げようとする)」

マベ「(壁の向こうから飛び出した。退却しようとする少女に、野獣のような凶悪な笑みを満面に浮かべ)尻尾巻いて逃げんじゃねェよオ!?(刃毀れしたナイフを打ち捨て、その手を指鉄砲の形にすると人差し指の先端に全ての風を集中させる。甘い匂いが強くなりーー)天国行きは保証するぜ!!テメエのお仲間によろしくなアッ!!!(鼓膜が破れそうな強烈な破裂音。マベの放った圧縮した空気の弾が、少女の肉体を地面ごとぶっ壊すほどの勢いで放たれた。)」

「(それが放たれる瞬間、顔を上げて目を見開いた。)(……が、声を上げる僅かな間もなく、地面に半分埋まった体がひしゃげて飛び散り、残ったのは壊れた地面と僅かな血の匂いだけだった。)」

ミラ「(両膝を立て、膝に顔を押し付けた状態で小さくなって座っている。両手は後ろに縛られたまま、動かせないようだ。)」

マベ「………ご愁傷様ァ。(原型を留めず潰れたそれに首を傾げ、大して面白くもないといった顔で。そしてハッとしてミラの方へと駆け寄った。)…ミラ、ミラっ……!!ミラ!!起きろ!!(膝をついて自分の方へ抱き寄せ、拘束している器具を外そうと。)」

ミラ「(引き寄せられ、ぺたんと地面に足を着いて座り、肩口のあたりに顔を埋めた。何だか少し温かい感触。)……んー、(無気力でくぐもった返事。拘束具が外されるのを待っているようだ。)」

マベ「(温かい感触に気が付いたが、気づかないふりをして手首の拘束具を外す。)悪かった。怖い思いさせたな。…ほら、首のほうも外すから顔上げろ。」

ミラ「(パッと顔を上げた。)……あーーー、びっくりした。こんな目にあったの久しぶりだよ。(にへ、といつものように笑った。)」

マベ「(かなり充血し濁った目で、困ったように笑い返した。)……なにが騎士様だよな、馬鹿みてーだわ俺。ごめんな。(ナイフのグリップ痕が残る火照った手で、首の拘束を外した。)」

ミラ「ほら、またそうやってしょーもないことで謝るんだから。 (けほ、と小さく咳き込んで)全然、そんなことないよ。一年前もこんなことあったんだよね。隊長がいたのに、だよ?(はは、と乾いた笑い。)……大丈夫?(頬の辺りに手を伸ばし、指先が触れるか触れないかくらいのところで止まった。手が震えているのに本人は気付いていない。)」

マベ「しょーもなくはねえよ。ビジネスパートナーを危ない目に遭わせちまった。お前こそほれ。追加料金の請求はしねェのか?………一年前か。………。(乾いた笑いに応えはせず、険しい顔で何か考えている。ふと、頬の横で何かが震えているのを感じ、苦笑いした。)…バァカ。お前のほうが震えてんじゃねえか。俺はヘーキ。今ので色々わかったしな。……隊長と合流するか。」

ミラ「……意外と真面目なこと言うよね。私の方こそ、相手の罠にまんまとはめられて馬鹿みたいだよ。だから、お互い様ってことで。(ぱっと自分の手を見た。すぐに引っ込めて。)ん?寒いからじゃない? ……。……。……え?やだ。私はあの人いるの嫌。(…)」

ゲラルト『……ミラ、余計な話はするな。』

マベ「………そーか。(ふ、とようやく安堵したように息を吐いた。最後のだけは呆れ顔になり。)嫌じゃねーよ……こっから出口まで距離あんぞ?そんな身体で歩けんのかよ?(と、ゲラルトの声が聞こえて表情を険しくした。)………隊長。話がしたい。合流できそうか?」

ミラ「(安堵の表情を見て、静かにため息をついた。)えぇ……だってさ、あの人すぐ怪我するし怖いんだよね。どうせ今も見えないからってやらかしてるよ?」

ゲラルト『…私の用は済んだ。この後会場をおさえるためにエントランスに向かうつもりだ。(どうせやらかしてる、という言葉に黙り込んで。)……。いや、そんなことはない。』

マベ「しゃあねえなァー。次はこんなふうには助けられねえから覚悟しとけよ?……あァ隊長、さっきは助かったぜ。5年ぶりに口にしたわ、あの”甘いの”。(「そんなことはない」の後に、笑いを含ませて言った。)………了解。エントランスで少し話そうぜ。なァに、そんなにはかからねえよ。……あんた次第だがな。」

ミラ「(少し悩み、イヤホンをしているのと反対側の耳に寄って、)……私、エントランスから外出るから、そこまでついてく。(し、と唇にまだ少し震える人差し指をあてる。隊長には黙っておこう、の意。)……ね。」

ゲラルト『……。(しばらく黙ったまま、何も言わない。)…わかった。』

マベ「………、(見えないのに目だけでミラのほうをちらと見た。意図の読み取りづらい表情になり、小さく頷いた。戦闘で破壊された通路内を風が吹き抜けていく。)………5分で行く。人質は全員外の奴等が確保した。(風による周囲の探知を再開し、立ち上がる。立てるか?とミラに目配せ。)」

ミラ「…怪我はしてないから。(当たり前みたいに片手を掴んで引っ張って、立ち上がろうと。)」

マベ「(肯定も否定もせず、背の高い屈強な男がされるがままになっている。)………いいのか。(付き合わせて、の意。)」

ミラ「えー、なに遠慮してんの?私とマベさんの仲じゃん。(冗談めかして笑った。)」

マベ「………ハッ。(乾いた笑い。これから隊長と話すことについて頭が一杯なのだろう。それでもミラのほうを向いて。)そうだな。お前にゃ”見られた”からな。今更どうってことねえし、………まあ。そんでもゲラルトが嫌なら無理強いしねえから。やることやったら、大人しく帰ってシャワー浴びて寝ろよ。」

ミラ「また喧嘩して5年口聞かないとかほんとやめてよ? (じ、と見上げて。掴んだ手が何となくそのままになっていたのを、ほんの少し引っ張って) あの。ありがと。ふつーに嬉しかったから、ね。(言い終わるより少し先に、ぱっと手を離して視線を逸らした。) 」

マベ「ッハハ、どうだかなあ!?俺は敵からも恐れられる狂犬マベ様だからなァ!(高らかに笑ってみせた。)…………。(手が離れた後も触れていたところをじっと見て、そっぽを向いているミラを見た。)………そうかい。そりゃァ、良かったぜ。(両太腿のホルスターに残った一対のナイフに手で触れ、感触を確かめた。パシッ!と音を立ててホルスターを手で叩く。)……さァて。別働隊が来ねェうちに行くとしますか。」