03.「喧嘩編」過去視

(現在。
イシスアセトのとある会員制クラブ。マベが入隊する以前からの馴染みの店であり、彼の仕事を理解しているオーナーが特別個室を用意している。)

マベ「…………とまあ、俺の戦い方はこんな感じだ。タイマンも張るけど、どっちかっつーと対複数のほうが慣れてッかな。」

(夜の店らしい豪奢な調度品の揃う部屋で乱雑に酒瓶や料理を広げ、女性と楽しそうに話す姿はとてもウライオスの隊員とは思えない。)

ミラ「(派手なピンクと黄色のグラデーションカラーのショートヘアに、黒い服を着ている。男とも女ともつかないが2人が並ぶとギリギリ女子に見えるかな…程度の格好。) へーーーー、すごーい。(ぜんっぜん関心なさそうな言い方) マベさんが入ってくる直前まで部屋にいたから音だけは聞こえたよ。 わー派手にやってるなー、って。(明るく笑った。前より少し人懐っこそうな笑い方。)」

マベ「うわ〜超興味なさそうだなお前!!そういうところ好きだわ!!(ミラの塩対応にも屈託なく笑っている。前の時のようにアルコール度数の高い酒を飲むためのグラスを手にしていて。)あー、じゃ俺が来る前に色んな奴から金品巻き上げてトンズラしたわけね。どうりで押収した金の額面がやけに少ねえわけだ。(目を細め、グラスの中身を一口あおり。)……ま、ほどほどにしとけよ?」

ミラ「興味無いんじゃないけど、説明されてもよくわかんないし。並の術師の話ならまだしも、アンタらはぶっ飛びすぎててさあ。 ……いいじゃん別に。押収した金で生活してるわけでもないんでしょ?ちょっとくらい私に分けてくれたって。(ぷー、と唇を尖らせてわざとらしく拗ねてみせる)」

マベ「え?そーなのか?……そうなのかな。(分からないと言ったふうに首を捻った。)だってお前、他の隊員のとか見たことねえか?そっから大体想像つくだろ? …………。(ほとんど空になったグラスをことんとテーブルに置き。)……俺はな。連れてこられた女子供は、そうはいかねえ。あいつらがああいう場所でやり取りする金の一部は、人質やその家族から巻き上げたもんだったりするからな。判明した分は、返してやってる。」

ミラ「自覚ないの?ウライオスの隊員でぶっ飛んでないヤツ、一人もいないって一般市民なら全員思ってるよ。私が目の前で見た事あるのは隊長くらいだけど、あれはもう、狂ってるよね。(空になったグラスを見て、それからじっと目を見て。)……。……マベさんのくせに何カッコつけたこと言ってんの?わたしの身体平気で触るただのスケベじゃん。あーやだやだ、これだから国家公務員(笑)は…。(やれやれ~って感じで…)」

マベ「それは魔術とか力とかがぶっ飛んでるっていうより、ここ(頭を指し)がじゃねえのか?ハハ、ッ………(隊長とミラが口にした途端、笑いかけていたのを止めた。なんとなくイヤな空気。)………。(カッコつけたこと、のあたりは全く耳に入っていない様子で。)…………あ、あああ?…ああ!すまんすまん、あれはその、演技が行き過ぎた。ホント悪かったって。…ゴメン。(片手を挙げて、苦笑いで謝った。)」

ミラ「どっちもだよ、っていうかそれ自分で言う~?(おかしそうに笑ったが、その後の様子を見て少し首を傾げた。)なるほど。なるほどね。(そして何故か頷き、一旦その反応を無かったことにした。) 履いてないって知ってて触んないでよね。あの場で嫌とも言えないしさぁ。……。(それ以外にも何か思い出したのか、複雑な表情。そして気まずそうに少し顔を背けて)…普段あんな感じなんだね。」

マベ「………あ、(飲もうと唇まで持っていって、グラスの中が殻だったのに気付き手酌でなみなみと注いだ。)………悪かったって。本当ごめん。引っ叩いてくれてよかったんだぜ?男女の痴話喧嘩なんて、ああいうところじゃよくあるからよ。…………なんだ、怒ってんのか?まだあるならハッキリ言ってくれ。(ミラの表情の意味がわからず、困惑気味に。)…あんな感じって、言われてもなあ。」

ミラ「(動作のひとつひとつを全部目で追っている。観察しているみたい。)あんまりそんな謝んない方がいいよ、何か大の大人の男がみっともないじゃん。怒ってたら誘われてこんなとこついてこないけど……、なんて言うか、ああいう扱いは慣れないんだよね。私、……いや、や、やめよこの話。(ぱたぱたと適当に手を振って、話題を切り替えるつもり。)」

マベ「(どことなく落ち着かない様子で、ミラの視線には頓着しない。)………いや、……みっともなくても謝らねーといけねえときってのはあンだよ。特に、大人になったらな。(喉を鳴らすほどの勢いでグラスの中を煽った。グラスを置くことなく瓶に手を伸ばす。ペースが早い。)おいおい、なんだ?自信たっぷりなミラ様はどこ行ったよ。…ま、いいけどよ。(飲むか?と、アルコールの弱いほうの酒瓶を手に。)」

ミラ「ふーん……?私まだ22だけど、それくらいの歳になったら少しは反省する人生歩めるのかなぁ。(またまたじーっと見てる。何となく思うところがありそう。)何言ってんの?私は常に自分にはめちゃくちゃ自信持ってるし。あー……、まあいっか。マベさんって意外とちゃんとした奴なんだね。……。……飲む…。(言ってからちょっと後悔したみたいな顔。グラスを差し出した。)」

マベ「は!!??22ッ…(絶句した。色々思うところがあるらしい。)………。………ああー……ソウネ……人によるカナ……?(物凄く微妙な表情。あまり見るなよ、と身体を少し離して手だけミラのほうへ向けてパタパタさせる。)……。………ちゃんとはしてねえよ。今朝も嫌な夢から覚めた途端に二日酔いコースだったしな。(注ぎかけて、ふと目線を合わせ。)ジュースにするか?」

ミラ「は?何その反応? 私、家出たの13の時だから、その時からこの生活だよ。(注ぎかけて止めたその手を上から掴んで注がせる。そして黙って飲みほして、唇の端を親指で拭って)…………で?その大人なマベさんが謝んないといけないのって、誰のことなのかなぁ?(急に身を乗り出してニヤリと笑った。)」

マベ「はアァ!?おま、家出少女だったのか。どうりで、………。(手を掴まれたまま、グラスを、次にそれを飲み干して見せたミラを見つめた。)…………ッ。(笑うミラに対して、片目を細め苦々しい顔になった。)……………お前。いつからわかってた?」

ミラ「そうだよ。え、何?濁さないで言いなよ。 (両頬を支える形で机に両肘をつき、目を細めてにっこり笑った。)え~?だって、隊長の話した時になんか動揺してたしい、急に『謝らないといけねんだよ、大人になったらな(※マベさんの口調真似しながら)』とか言うからさぁ~。なになに?隊長怒らせるようなことしたの?最近?」

マベ「どうりで肩肘張って生きてるわけだって思った。(ここだけは先程の苦々しい表情を消してきっぱり言い切った。)……………、(自分も中身を飲み干し、グラスをやや乱暴にテーブルに置いた。硬い音が室内に響き渡る。)…………………聞きたいか?(少し、部屋の空気が変わった。重苦しさが増したような、元々二人だけの室内だが、さらにしんと静まり返った。)」

ミラ「(少しぎょっとしたような顔。)……何それ。急に大人ぶらないでよ。 (一瞬視線を外して、それから片手頬杖に変えて、また真っ直ぐその顔を見る。)……私は聞きたいけど、聞いていいの?」

マベ「大人だぜ。俺はお前より数年前に生まれて、二十歳んときにウライオスに入隊してる。一人で生きてきた時間はお前さんが上かもしれねえが、人生経験は俺も負けちゃいねえ。知ってんだろ?”情報屋”。(ぐ、と自分も手の甲で口元を拭った、その手をゆっくりと退けると、口の端で笑ってみせ。) ……ああ。構わない。長くなるし、きっと言葉が足りずわかりにくいことも多いが、いいか?」

ミラ「色々調べさせてはもらったけどね。マベさんさあ、ちょっと特殊な入り方したんでしょ?だからあんまり過去のことわかんなかった。 (きょとんとした顔で、少し首を傾げた。)うん……? まあいいや。聞く聞くー♡ でも聞くのつまんねーってなったら途中で帰るね♡」

マベ「ああ……俺は魔術学校で勉強したわけじゃねえし、試験も少し特別だったからな。そこらへんは気になるなら、おいおい話してやるよ。 ……お前、情緒不安定気味って言われたことねえか?(ちょっと呆れ気味に。)………まあ、それでいいよ。………今から5年ほど前だな。俺と隊ちょ、……ゲラルトさんはまだ同僚同士でな。俺は入隊当初からあの人がいけ好かなくて、よく突っかかってんだが……」

ミラ「え、なに、情緒不安定って普通に失礼だよ。 ……5年、かぁ。(自分の5年前について少し考えを巡らせた。) はー、わかるわかる、いけ好かないよねぇ。私もあのスカした顔、一発殴りたいって思ったことあるもん……、やらないけど。突っかかる勇気を褒めてあげたい。」

マベ「動きが多すぎんだよ。声色もころころ変わるしよ。風の流れが安定しねえ。……まあ、こっちゃ男相手に戦うことが多いから、俺が慣れてないだけだな。気にすんな。(ふ、と息を吐いて。)…………一発殴れればまだよかったんだがな。あの人とやり合えるような強さは、俺には無くてよ。そんで、あることをきっかけに俺は猛烈にあの人が嫌いになったんだ。」

ミラ「だって22歳のガキですから、落ち着きがないんですう~。ふふ、やりにくいと思ってるならそれは私の思う壷だけどね。(にや、と一度だけ笑って。) あ、もしかしてめちゃくちゃやり返されたってやつ? えー、嫌いだったんだ。意外。私を紹介するくらいだからずっと仲良かったのかと思ってた。」

マベ「それはいいよ、年重ねりゃイヤでも落ち着く。思う壺ってんなら、望むとこだ。(テーブルに両肘をついて、手を口元で組んだ。どこか、遠いところを見ているような表情。) …………結論から言うとそうだ。俺が喧嘩を吹っかけた。理由は、(息を吸った。次の言葉を口にしようとして。だが、そこで止まったまま、また口を噤む。)………。………ミラ、今から話す内容を聞く前に、ひとつ条件をつけてもいいか?」

ミラ「……マベさん、隊長に喧嘩売ったの?あの人に喧嘩売ったの…?それはすごいね…、ちょっと心して聞こうか…。(ん?とまた首を傾げた。大きな瞳でじーっと見つめている。)ああ、うん、いいけど……何?」

マベ「この話を最後まで聞いたら、”笑え”。ニッコリ笑うとかじゃねえ、嘲笑うか蔑むか、そういう笑いだ。誰を笑うかはもうわかってんだろ。………いいな?(鋭い目つき。見えていないとは思えないほど。あまりに真剣すぎて、張り詰めた空気が漂う。)」

ミラ「その点では私は聞き役にぴったりなんじゃない? ……いいよ。どうせ私に隠し事なんてできないんだからさ。(張りつめた空気も気にとめず、いつもの様子で足を組みかえて。)……今日はそういう気分なんでしょ。付き合ったげる。」

マベ「ハ…、(苦笑いにもならないような笑みを浮かべた。)そうなんだよ。今朝見た嫌な夢ってのが、まさにその喧嘩のときのやつでね。………じゃあ話す。………ゲラルトの前の隊長、あいつの親父さんが死んだ後、あいつは変わった。元々感情を出さねえ奴だったが、そんなレベルじゃなかった。戦い方も鬼かそれ以上ってくらいでな。」

ミラ「あー……、うん、それは私も知ってる。一刀って人でしょ。(少し悩んで、その後のことを言うのはやめた。少し表情が暗くなった気はする。)まあね。全員殺せばいいやって思ってるし、あんまり自分を大事にしないし。」

マベ「……………そうか。知ってんのか。(ミラの様子を少し気にしたが、マベ自身も重苦しさに包まれて。)………俺は生前の一刀さんから、必要以上の殺しはするなって言われたことがあってよ。それを一切無視したゲラルトのやり方と、誰も顧みねえ態度に腹が立ってた。……そして5年前。あいつと二人で任務に就いたとき、とうとう俺は我慢できなくなった。」

ミラ「(明らかに一度表情を歪めたが、すぐに顔を背けて俯き、机に置いていた方の手を無意識にぎゅっと強く握りしめた。)……ふーん、そっか。隊長は多分……、あー……ごめん何でもない。続けて。」

マベ「(手を組むのをやめて、窮屈そうに座り直した。)いつものように敵を皆殺しにしたあいつに、俺はやり過ぎだ、もっと周りを見ろって忠告した。…忠告だなんて体の良い言葉で、本当はただ自分の感情をぶつけただけだがな。当然向こうも、俺の甘さや力不足を指摘してきやがった。(当時のやり取りを思い出し、眉間に深い皺を寄せ苦々しい表情になった。)…あとはもう互いに罵り合いだ。立ち去ろうとするゲラルトに、俺は勝負を挑んだんだよ。(ふっと自嘲気味に笑い。)………結果は、最初に言った通りだ。」

ミラ「あの人、そんな事するんだ。無視しそうなもんだけど、言い返したんだ?ちょっと意外かも。(ハッとして握った手のひらを開いた。長い爪の跡が手のひらにくっきりと残っている。) ……。……2人とも、前の隊長が死んで気が滅入ってたんでしょ。今の私より年上だったくせにさ、ほんと、バカみたい。(と言いながら、馬鹿にする様子はなくちょっとだけ笑った。)」

マベ「バンバン言い返してきたぜ?あの野郎。(ミラの調子に合わせてへっとそっぽを向いてみせて。)俺はあの人とは違う、とかなんとかよ。一番カチンと来たのは『お前の戦い方は感情的で正確性に欠ける(※ゲラルトの口真似+無表情)』…あーーっ今思い出してもクソ腹が立ってくるぜ(と言いつつ、もう全く気にしていない様子。)…………そうだな。実際そうなんだよ。大人の男ってよ、変なとこで意地張るんだよ。……っあー。(憂鬱そうに溜め息を吐いた。)」

ミラ「へー……、私が何言ってもため息しか帰ってこないのに。(隊長の真似したとこでようやく前を向いて。)……っふふ、何それ。似てないし。(頬杖ついてた手を口元に持ってきて、おかしそうに笑ってる。) ねえ、悪かったって思ってるんなら素直に謝りなよ。私にはどーでもいいことでもすぐ謝ろうとするくせに。」

マベ「それだけ気が立ってたんだろ、あっちも。俺がそういうのに気付いたのはだいぶ後になってからだった。なんせこてんぱんに負けたのが悔しくて悔しくて、………(何かを思い出して片目を細めた。)……ずっと一人で鍛錬ばっかやってたから。まあそしたら見事に謝るタイミング失って、そっからまたちょっとあって、今に至るわけよ。………な?馬鹿な話だったろ?(優しく笑った。)………それは、………。…………そうなんだけどよ。」

ミラ「まあ、それは……。そうだろうね。あの人も人間だから。(何か思うところがあったらしく、少しだけ表情が曇ったが、多分分からない程度だろう。) そっか…。んーーーと、私らしくないこと言うんだけど……、過去のことずっと心に溜めとくのってよくないよ。どっかできちんと消化しないと、前向いて生きていく足枷になるから。」

マベ「……当時の俺にはそれがわからなかったんだよ。親父さんが死んでなんでそんなに頑なになんのかがサッパリわかんなくてよ。他の隊員の気遣いにも気付かねえような態度だし、…いや、これも偽善だな。もっと自己中心的な気持ちがあったからだ。…………、(ミラの言葉に、意外そうにニヤリと笑った。)…へーえ。言うねえ。…ま、その通りだな。けどよ、もう俺はあいつのこと認めてるし、あいつも……、(あ。という顔になったがすぐに真顔に戻った。)…なんでもない。悪いな、変な話に付き合わせてよ。」

ミラ「もー、ほんっと馬鹿だなぁ。なんでわかんないの?あの人、隊長にとっては唯一の…、(ニヤリと笑われて、ちょっと嫌そうな顔。)……やっぱり言わなきゃよかった。 まあね、そうじゃなきゃ私らがこうやって会話する機会は与えられなかったわけだし。 ん、いいよ。でもさあ、(すっと椅子から立ち上がった。)」

マベ「俺にとっても、一刀さんは恩人だったからだよ。(目を伏せ、何度目かわからない溜め息を吐いた。)……だから、笑ってくれって言ったんだ。あいつの失ったものに比べりゃ、俺の小さなプライドなんざどうだっていいことなのによ。(置かれていたグラスに手を伸ばし、掌で転がしながら自嘲する。)…………ん?何だよ。(立ち上がったミラのほうを見上げた。)」

ミラ「恩人とかいうレベルじゃないの、あれは。別に私は笑うほどの話でもないと思ったよ。そういうの無くしたら生きていけないんでしょ、男って生き物は。(つかつかと歩み寄ってくる。隣の椅子をひいて急にそこに座り。) ……その話、まだ半分だよね?大事なとこ話してない。」

マベ「………そう、なの、か?(極めてバツが悪そうに。)………。……そうか。俺は笑ってもらったほうがいいよ。自分を甘やかしたくねえからな。(言いながら、隣までやってきたミラをじっと見ていたが、ギョッとして。)…は?いや、もうねえよ。これで全部、だ…。」

ミラ「ほんとに知らないんだ。んーじゃあ言わないでおこ。(肘で腕の辺りをつんつんと小突く仕草。)またまたぁ~、その話だけだったら隊長の話が出ただけであんな顔しないでしょ? ほらほら、正直に言いな。ひっどい負け方したんでしょ?(ニヤニヤ~っと嫌な笑い方する奴…)」

マベ「…………。(なんとなく面白くなさそうな顔になったが、何も言わなかった。)………ぃっ、(腕をつつかれ、めちゃくちゃイヤそうな顔をした。)……ああそうだよ、そりゃあもうコッテンパンのギッタギタにな!(軽く舌打ちしてミラから顔を背けるように腕組みした。)俺はあいつの魔術がどういうものかも知らなかったからな。………これでいいだろ?」

ミラ「あ、いい顔するねぇ~♡ 私からすればマベさんだってめちゃくちゃ強いと思うけど、あの人はバケモンみたいだもんね。(背けられた顔を覗き込もうと前のめりになって。その時に一瞬視線を落として何か見たような気もする。)何が「これでいいだろ?」なの?いいわけないじゃん。ねえ、教えてよ。ねっ?」

マベ「バケモンてお前な…、おい。あんまりくっつくなよ?触られんのヤなんだろ?(さらに顔を背けるように身体を捻る。)教えてって言われてもなァ…、俺もどう説明すりゃいいかわかんねえんだよ。感覚はよく覚えてんだけどな、………。(複雑な表情。)」

ミラ「触られるのは嫌だけど、触るのは嫌だとは言ってないよ?(何言ってんの?みたいな顔。)感覚を覚えてる?あー、もしかしてアレまともに食らったの? ………気持ち悪いよね、何か嫌な酔い方したときみたいな。」

マベ「ホント女王様だなお前は(少し呆れたような顔。)……モロだよ、モロ。死ぬかと思ったぜ。……?(怪訝そうに眉を顰めた。)……いや?そういうイヤな感じではなかったな。あれはむしろ、(言いかけてハッとして)……とーにーかーく!俺の口からは言えねえ。実力行使なら受けて立ってやるがな。」

ミラ「そうかな?別に普通なんだけど。意外と可愛い乙女だよ(笑)(自分で言いながら笑ってしまう。) え?そうなんだ。なんかハイになる場合もあるとか聞いたことあるけど、(ぴた、と動きを止めた。じいっと見ている。) ほーう…、お口で言えないならー、どこから教えてもらおっかなぁ~?(意地悪く笑って見せ、指先で胸に下げているタグのチェーンを引っ掛けて手繰り寄せようと。) 」

マベ「自分で笑うなよ、笑ってるときゃマァ可愛いけどな。……ほー。じゃあアレをどう感じるかは人それぞれって具合か。とんでもねえ能力だな…。(ミラの一連の動きを気に留めるふうでもなく、されるがままになっていた。が。胸から下げていたタグを指先に引っ掛け手繰り寄せようとした瞬間、その手を掴もうと。)……外すなよ?こいつは大事なモノだからよ。(少し、ドスのきいた声。)」

ミラ「ごめん、自分で言ってそれはないわって思っちゃった。(手を掴まれても別に驚く様子もない。タグの部分を手のひらに握りしめたまま。)大丈夫、外す必要ないから。(ぽん、ともう一方の手を掴んだ手の上に乗せて、首を傾げてニコッと笑った。何だか雰囲気が違う。)……ちょっとだけ、黙っててね?」

マベ「……ははっ……(どこか上の空で笑う。ミラが手にしたのは認識票。兵士の名前や生年月日などが刻まれた、いわゆるドッグタグ。)………いきなり雰囲気が変わったな。お前、何する、(黙っててと言われて口を閉じた。)…………。(自分もあの日をつぶさに思い出そうとしているのか、俯いた。)」

ミラ「やだなぁ、私の本質はこっちだよ。(じ、とミラの大きな目が見つめる。嫌だと思っても何だか逆らえない空気。)……いつもはこんなことしないんだけどね。(ふ、と目を閉じた。そのまま何も言わずにただそうしているだけ。)」

マベ「………!(何か思い出したようだが、唇が動かない。俯き加減で少しこわばった表情のまま、胡乱な目つきで固まっている。)………、…………。(もう片方の手を少しずつ動かし、自分の口元へ持っていって、また動かなくなった。)」

ミラ「(目をつぶったまま、たまに顔を顰める。ふう、とたまに大きく息を吸って吐く。そんなことを繰り返して、しばらく時間が経った。)……っわ!! (ばっと手を離して、驚いた顔で見ている。)」

マベ「(ミラが目を開ける少し前から、がりがりと小さな音が聞こえるかもしれない。)………………おう。終わったか……。(めっちゃテンションガタ落ちの顔で自分の親指の爪を齧っている。)」

ミラ「(暫くそのまま固まっていたが、)……ははっ……。(乾いた笑い。)あー……っふふふ、さっき笑うほどの事じゃないって言ったけど訂正しよ…… っふふふ、ごめんねえ、あんまり気になるから”見ちゃった”。(肩を震わせて、なるべく笑い声をあげないように笑ってる)」

マベ「……ハ、ハハハッ……笑えるだろ…?(目を細めカラ笑いを強くした。噛んでいた指を離し、椅子にもたれかかる。)……あー今思い出しても気色悪ぃ。二度とゴメンだぜ、アレはよ。……そうだわ。思い出したわ。お前、そういう力を持ってんのな。」

ミラ「いや、ほんとキモいんだけどww いやーもう完全にさぁ……、あっ、やめとこ。これ言っちゃうと何か問題あるわw ……。……。(力無く笑った。)そうだよ。もう会うの今日が最後かもなーって思ったから、もういいかって。ごめんね、勝手に見られるの嫌だよね。(ふと視線を落とした)」

マベ「うっせえなーこっちゃ死にそうだったんだぞww俺は目が見えない分、聴覚や嗅覚、触覚なんかを鋭敏にしてるからな。おまけに俺の魔術とも相性が悪い。見事な初見殺しだったよ。完全に、……俺の負け。だろ?(ミラの濁した部分は、そう言い換えた。ふと優しい表情になって。)お前のやり方は多少強引だったが、最終的に許可を出したのは俺自身だ。気にすることはねえ。」

ミラ「ああ、そっかぁ……喧嘩売った相手が間違ってたね。っふふ、あんなことされてあんな風になるんだ。やばいな〜。(はは、とまた口先だけで笑った。)マベさん、やさしーね、そんなんで足元すくわれない? あぁ、ちょっと疲れたなぁ……、結構エグいもの見ちゃった。……無関係の人が死ぬのって、やだね。(机に両手をついてゆっくり立ち上がる。元の席に戻ろうとしたが、そのまま動かない。)」

マベ「ああ。でもあの喧嘩がなかったら、また人生違ってたんだろうなとも思うよ。…いまだに意味がわかんねえんだけどな、あの感覚。説明しづらくってよ……ま、いいわ。(照れ臭いらしい。わざとらしくコホンと咳払いして。)俺は優しくする相手は選ぶ。誰彼にも優しいわけじゃないぜ。…特に国賊にゃあな。…………ひとが死ぬってのは悲しいもんだ。お前も全く無関係ってわけでもないんだろ。………ん?(ミラの物音に怪訝そうに。)どうした、疲れたか?」

ミラ「さあね、またやられる日もあるかもよ?(かく、と頭を下げて。)そりゃそうでしょ。今のでわかったと思うけど、私は利用価値ある人間なの。優しくしといて損は、無いと…思うよ。 うーん、濃い5年間だったなぁ……アンタが見えない奴でよかったや。(足が震えていて、動けなかったらしい。) やっぱり座ろ……、いや、どうしよ、(そのままがくんと床に膝をついて、机に額打ち付けて結構な音がした…。)」

マベ「おう、受けて立ってやらあ。……あの人には勝たなきゃいけねえからな。(ぽつりと。)………お前、肩肘張って生きてんなぁマジで。おい、他の記憶は見てねえだろうな?(立ち上がって介助しようとしたときに鈍い音がした。)お、っ…すっげえ音したぞ!大丈夫か!?(隣に膝をつき、ミラの背中に手を回そうと。)」

ミラ「いっ………… たぁ………………。(がく、と項垂れた。)酔った勢いでやるもんじゃないねー……、ぶっ飛ばして見てたから大したもの見てないし、SM……じゃなかった喧嘩したとこでやめちゃったし。 大丈夫?私の頭割れてない?(顔を上げると、額は赤いけどさすがに割れちゃいない。顔色がよくない。)」

マベ「SMじゃねえよ何言ってんだこんな時に…肩貸せ(抱き起こそうとしながら、テーブルにぶつからないよう周りに気を配る。)血は出てねえから安心しな。ただお前、今ので疲れたろ。顔色が悪い。送っていってやるから宿教えろ。」

ミラ「え、違うの?私、隊長のドSっぷりにドン引きしちゃったよ……(また小さく笑ったが、すぐにしゅんとして)よかった。一瞬お星様見えたもん…。あ、わ……、そういうのいいよ、床に寝転がしといてくれたら自分でどうにかするし、(でも拒否する元気もなくされるがまま。)えーーっと、……と、……ってない……(めちゃくちゃ小さい声で。怒られてる時の子どもみたい。)」

マベ「あいつは悪趣味野郎だけどな。俺は違う。(ゆっくり立ち上がり、身長差があるため自分は低く屈む格好になる。)………ミラ。俺の目は見えてないが、誰が何やってるかはわかる。今後の付き合いもあるから、覚えとけ。不調は隠すな。(さり気なく、また会う機会があるかもしれないことを伝えた。)………そうか。じゃ、近くに知り合いの女がやってる宿屋があるから連れて行ってやる。歩けそうか?(小さな声なのをまったく気にせず。)」

ミラ「(むう…)……やだ。弱みなんて絶対見せたくないの。 ……でも、今日は特別ってことでいいや…、面白いもん見たし……(こて、と額を寄せて寄りかかった。)歩けなーい……って言ったらお姫様抱っこでもしてくれんの?しないでしょ。もー何でもいい、寝たい……」

マベ「わかるよ。俺もそうだったからな(ク、と可笑しそうに笑った。今日で一番自然な笑顔かもしれない。)……見えねえのは、良いことのほうが少ねえよ。俺は一刀さんもゲラルトも、お前の顔もまだ見たことねえからな。(ここだけは聞こえないくらいの声で呟いた。)
あん?繁華街の馴染みに見られちまうぞ?ま、いいけどな!(言いながら、屈んで脚を掬うようにしてミラをお姫様抱っこしようと。)」

ミラ「……え、今なんて―――― (ぼんやりとその顔を見上げようとしたが、急に抱き上げられて目を見開いて。)ちょっ、ちょ、まっ、違うじゃん!!!冗談通じない人!!!? (と言いつつ、反射的に首元に掴まってしまった自分に気づき) ……~~~っ…💢💢(やり場のない感情)」

マベ「頭しこたまぶつけてんだから遠慮すんなって。後で冷やしてバンソーコー張ってやっから(また可笑しそうに笑った。)それともまだ怒ってんのか?………おう。(首元に縋られた。するりと手を滑らせるように、抱き上げ方をしっかりと直した。)あ?そーいやこの前も姫抱っこしろみたいなこと言ってたな。お前誰にでも言ってんの?たまに冗談通じねえ奴もいるから気をつけろよ(足で椅子の位置を直し、ミラを抱えたまま出て行こうと。)」

ミラ「要らないし部屋入ってこないでよ、(不貞腐れた顔。むぎゅ、と鼻先を押し当てるように顔を埋めた。)言わない、こんなこと……真に受けるほうがおかしいんだよ。あーもう、ほんと、バッカみたい……(言いながら少し気だるそうにして。抱えて揺られている間に眠ってしまうかもしれない……)」

マベ「へーへー。寝てたらドアからベッドに放り投げてやるよ。(少しくすぐったそうに口の端を歪めた。)俺は馬鹿だっつってんだろ。馬鹿じゃなかったらあんなクソみてえな喧嘩してねーよ。………。あんがとな、笑ってくれてよ。(最後にぽつりと。聞こえてないほうが良い、と思いながら。ミラを抱えたまま器用にドアを開け、個室を後にする。)」