(あれから暫く経ったある日の、教会の建物に囲まれた中庭。聖職者たちの安らぎの場でもあるその場所は綺麗に手入れされており、そこに住まうもの以外も足を運ぶことがあるようだ。その一角、ちょうど木陰で休めるように整えられた場所に数人の子どもが集まっている。)
マヘス「(子どもたちに囲まれ、何かを話している。相変わらず黒眼鏡をかけドッグタグを提げているが、その表情は打って変わって穏やかで時折笑顔すら見せる。何かをせがまれ、手渡してやっているようだ。)」
ルト「(大きな荷物を抱え、中庭の見える通路を歩いてきた。聞こえてくる声の方にふと目をやって、徐々にその速度が落ち、ついに立ち止まる。じっとそっちの方を見た。)………………。(何も言わずに、いつもの表情でじいっと見ている。)」
マヘス「(子どもたちに渡しているのは、どうやらナイフで彫った木製の人形らしい。簡素な造りだが円錐型の胴体に丸い頭がくっついており、その背中からは小さな羽らしきものが生えている。ひとしきり話すとちょうど誰かが呼ぶ声がして、子どもたちが一斉にそちらへと走っていった。それを見送ると、穏やかな表情にふっと陰が差した。何かを憂いているのか空を見上げたまま動かない。)……………………。」
ルト「(しばらくその様子を見ていたが、抱えた荷物が傾いていくのに気が付かず、箱の上に積んでいた本が滑り落ちて一冊地面に落ちた。そちらに意識がいき、視線がそれた途端に残りの本が崩れそうになる。)…………あ。わ、(どさり、と大きな音を立ててその場に座り込んだ。)」
マヘス「……………!(騒々しい物音に振り返った。落ちた物がなんであるのか、物音の主が誰なのかを察してまた少し穏やかさを取り戻した。音の主のほうへゆっくりと歩み寄る。)………どうした?大丈夫か。」
ルト「…………はい。残りの私物を運んでいました。本と衣類くらいなので…、大丈夫です。壊れてはいないでしょう。(近付いてきたマヘスをじっと見上げる。散らばった荷物もそのまま。)」
マヘス「(ふっと笑った。)言えば手伝ってやんのに。修道院長のヤツからお小言言われなかったか?(見上げられているのに気づいているのかいないのか、助け起こそうと手を差し伸べた。その手に幾らかの切り傷がある。)」
ルト「ええ、まあ…………、私があちらで過ごすのもそろそろ限界だろうと、ある程度の理解は示しておられました。(今度は差し出された大きな手をじっと見つめ、ほんの僅かに息が詰まる。それを誤魔化すように両手でそれを包んだ。)神父様、怪我をしています。」
マヘス「そろそろもクソもねえよ。俺が言わなけりゃあ一生あそこでお前を囲う算段だったんだぜ、あいつら。権力をタテにしやがって……(手が温かさに包まれた。怪我のことを指摘されると目を細める。)………ガキどもにせがまれてな。ちィと細工してたらこのザマだ。これでもだいぶマシになったほうだ。(ぶっきらぼうに言うと、強引にルトの手を掴んで立たせようとする。)」
ルト「それは、どちらに居ても同じでしょう。私の血は有用ですか、らっ……(強引に引っ張りあげられ、とんと頬が肩の辺りに触れた。)優しいのですね、神父様は。…あ、血が服についてしまいますよ。(手を握ったまま、指先を伝った血をぺろりと舐めて拭おうと。)」
マヘス「………優しくなんかねえさ。相棒なんて体の良い言葉を使ったが、結局のところ奴等のやってることと変わらねえ。………ッ!(指先に温かく湿った何かが触れた。息を呑み、ぞわりと背筋が痺れるような感覚を押し殺した。)………お前な…、………。………。………こんなクソみてえな世界でもな。ガキどもの無邪気なとこ見てると、捨てたもんじゃねえって思うんだ。(背を屈め、ルトの落としたものを拾おうと手で地面を探る。どこにあるかまではわからないらしい。)」
ルト「構いません。だとしても……、私を求めていただけるのならそれでいいんです。(ちゅ、と傷を吸ってから、どこからか出てきたクマさん柄の絆創膏を貼った。)……。私も、ほんの少しだけ思いました。 ……。……あ。あの、自分で拾います。(少し慌てた様子で手を伸ばした先にあるものを拾おうとする。)」
マヘス「…………。…………強くなりてえなら、欲しいものを決めな。(どう言おうか迷ってからぽつりとそう言った。貼られた絆創膏がクマさん柄なのには気付いていない。)……あいつらのためにも、気張ってやらねえととは思うがな。(黒眼鏡の奥で瞳の色が一段と濃くなった気がした。)………もう、長くねえのかもしれねえな。(低い声で。ルトの手の動きで在り処がわかったらしく、サッと手を伸ばして指で掴もうとする。)…………?」
ルト「私が欲しいものは、もうここにはありません。私が役目を終えたらいつか、………あっ、あ……(何か言いかけていたが、拾おうとしたものを先に取られてしまい、急いで取り返そうとしている。)駄目ですよ、こんなところで……!」
マヘス「心が弱いのを嘆くなら強くなるしかねえ。強くなるにはどんなものでもいいから欲しろ。ここにねえなら作れ。………無茶言ってるのは百も承知だからな?……は?あンだよいきなり。拾って何か悪りイのかよ?(身長差でルトをいなし、握り締めたモノを頭より高く掲げた。明るい水色と白の縞柄の、両端に大振りの紺のリボンがついたナニカが風にはためく……。)」
ルト「作れませんよ。私には人間を生み出す機能は備わっていませんから。 神父様っ、 それはミラが買ってきた下着です……!返してください……!(背伸びをしても届かず、肩の辺りを持って、少しジャンプして奪い取ろうと。)」
マヘス「…………、…………お前。(欲しいものが何なのか、もう手に入らないのは何なのかを、今の言葉で予想した。その先を何か言おうとするが目の前で動き回るルトに集中力が途切れてしまう。)……おい、ルト!こっちゃア真面目に話してンだぞ!?今オマエなんつった?ミラが買ってきたパンツだァ!?また女物か!?なんかヒモみてえな感触が、(肩を持たれ体勢が崩れた拍子にいい感じの強い風が吹いた。手の中のソレが掠め取られ、いい感じに広がったまま先程子どもたちのいた辺りに植えられた木の枝に引っかかった。)………………どっか行った。」
ルト「私も真面目に話をしていましたが、神父様が私のパンツを勝手にとるからですよ。(ぴらりと風に乗ってとんだパンツを目で追い…。)………………木に引っかかりました。(コツコツと靴音を鳴らしてその気に近付いて見上げると、ふうと大きなため息をついた。)仕方ありません、登って取ってきます。」
マヘス「………今の、俺のせいなのか……?(納得がいかなさそうに靴音のほうへ近づく。ルトの横に立ち、風が木々の葉を揺らす音に上を見た。)………お前、木登りできんの?」
ルト「……見えるように掲げなくてもよいかと。しかもミラがふざけて買ってきたものを……。(ちら、と横に並んだマヘスをみた。)魔物と戦うよりは簡単でしょう。神父様が手を伸ばしても届かなさそうですから。」
マヘス「イヤァだってよう…、パンツだとは思わねえだろ…?…………んン?(ちょっと困った顔でルトを見下ろした。一瞬何か忘れているような気がしたが、気を取り直し。)………まあ、そうだな。お前隙がデカいだろ。木登りっつーのはガキの遊びに見えて、なかなかどうして一瞬も気が抜けねえもんだ。ちィとやってみな。」
ルト「(ごく僅かにムッとした様子を見せたかもしれない。黙ってその木に手を置いて上を見上げた。)……。(鋭く息を吸った後、地面を蹴って一番低いところにある枝に両手をかけ、勢いのまま懸垂状態から身体を一気に引きあげて両足を乗せた。)……と、(そこで初めてはいていたショートブーツを乱雑に脱ぎ、木の下に落とした。次の枝に手をかけ、今度は慎重に幹に足をかけて登り、意外とあっという間に目的の場所へ近づいたが、そこで一旦動きを止める。)」
マヘス「……気をつけろよ。(息遣い、地面を蹴る音、空を切る音にそちらのほうへ目をやった。戦闘時に少し近い真面目な表情でルトの動きを追っている。残された感覚で少しでもそれを把握しようとするが、自然と目を細め眉間に皺が寄ってしまう。)…………、(ブーツの落下音にちらとそちらを見るが、音がしなくなった木の上に顔を向けた。)…………どうした?」
ルト「……いえ、先の方まで行くと私の重さに耐えられないかもしれないと考えていました。長いもので落とすか……?(ちら、と自分の下げている刀の鞘を見て少し複雑な顔をした。)いや、それはないな……。(太い枝に掴まったまま、手を伸ばして届かないのを悟り、足をぐーっと伸ばしてつんとつついて落とそうとしている。ひらりと頭上に落ちてくるかもしれない……)」
マヘス「………お前さ。ソウイウ下着はくの、やめねえ……?もう強制してくる奴はいねえし、………。(何かを思い出したらしく急にそっぽを向いた。耳だけはちゃんとルトのそうを向いている。)……その、なんだア。俺との訓練中にも変なパンツはいてんのかって思うと、手元が狂うん、(言いかけたその顔に、ひらひらと何かが落ちてきて、顔面を覆った。)…んッッぎゃっ!!??(不覚を取られた形で驚き、その肩が跳ね上がった。慌てて顔から何かを引き剥がそうと。)」
ルト「せっかく頂いたものがあるので買い直すのは勿体ないですよ。その程度のことで手元が狂うなら、神父様もまだまだですね。(そこまで言って目的のものが落ちたのを確認し、伸ばした足を引っ込めてから降りようとするが、)わ……(マヘスが大きな声を上げたのに驚いて少し精度を欠いたことで、飛び降りた瞬間にビリッと何か音がした。 )…………は!?(うまく着地はした……)」
マベ「(手でそれを引っ掴んで剥がした。カチンとしたらしく手の中の下着を握り潰す。…ちょうど手の隙間からリボンの部分が出ている…。)……んだとオ?言うじゃねえかルト、次の手合わせは手加減しねえからな?………。………あンだよ?妙な声上げて。」
ルト「……っ…………、(着地してしゃがみ込んだ状態のまま。)ええ、構いませんよ。私としても手加減されるのは不本意ですから……。……いえ。さして重要なことではありません。(視線を逸らした。まるで追求して欲しくないような素振り。)」
マヘス「……………?(怪訝そうに小首を傾げた。)そうかい。こっちも手加減は不要だぜ。見えてるモンだと思ってかかってこい。敵の目ン玉が潰れてても、手加減なんざしねェだろ?(人差し指に下着を引っ掛け、くるくると回しながら。)ほれ、いつまでもしゃがんでねーでシャンと立ちな。」
ルト「……神父様は目が見えないですからね。(ゆっくり立ち上がって、下腹部あたりのスカートをぎゅっと握ったまま、のてのてと歩いて落としたブーツにゆーっくりと片足ずつ足を入れて。)……あの。人の下着をそんなふうに扱わないでください。(くるくるされている下着をパッと奪おうと手を伸ばした。)」
マヘス「……………そうだ。だがヒヨッコ一人に遅れェ取るほどは落ちぶれてねえよ。俺を気遣うのは訓練外、いや、俺がどうしても必要としてる時だけでいい。……甘やかされるような理由で失明したんじゃねえからよ……(とか言いながら手を伸ばされたのでさらに手を高く掲げた。)」
ルト「ひよっこと言うほど落ちぶれてもいませんよ。この街では私たちのような魔術師は他にほとんど居ないのだから………ずるいですよ、背が高いからって。(パッとつられて両手を上げ、何かがぽそりと地面に落ちた。)……あ。(足元に、カフェオレベージュと濃いブラウンを使った、おしりのところにぺろんと猫のしっぽのようなモチーフが垂れ下がっている下着が落ちた。)…………。(大丈夫……見えてないはず……)」
マヘス「この街ではな…。……けどよ。お前の言う通り、この世界は強い奴が生き残れる確率がちょいと高いが、強くてもやられるときゃア簡単にやられる。…その程度の差だ。毎回そうってわけじゃねえが……、(何か軽いものが地面に落ちた音がした。)………。おい。またなんか落としてねえか?そういうとこが隙だらけだっつってンだよ…(拾ってやろうと前屈みになって手を伸ばそうと。)」
ルト「………。(少しだけ嫌そうな顔をしたが、多分わからないだろう。少しだけ細く息を吐いてその感情をコントロールするが、)…………! いえ、大丈夫です……いや、大丈夫じゃない!(思わず前かがみになったマヘスを止めようと前に立ち両肩を押し返そうとしたが、結果的にマヘスの頭頂部が布1枚隔てた何かにフニっと突っ込む形になったかもしれない。)」
マヘス「(フニ…………。)……あン?………。(頭に布の向こうのナニかが当たるのを感じた。そのままの体勢で止まっている。)…………。…………。(両肩を押されている具合でなんとなく、自分の体勢とルトの体勢とを頭の中で思い描いてみて。)…………おいルト。何してる……」
ルト「……。……ん、(数日前、何となくこんな位置関係で”ソレ”を咥えられていたのを思い出し、ふにっとしたところがちょっぴりむくっとしたような。咄嗟に肩を押し返して、)……!!! すみません神父様が私の履いていた下着を拾おうとするから……(※2回目)」
マヘス「(ん………?)………。………おい。ルト。おまえ、………。(押し返され、何とも言えない顔でルトを見上げて。)…………あー。コレ下着か。なるほどなァ……(まだ足元に落ちたままの可愛らしい下着を拾い上げてみせた。)………いやどうやったらそうなんだよ!?どーして俺はお前のパンツを両手に握り締めてンだよ!?(言ってる通り片手に新品、もう片方に脱ぎたてを握り締めている……)」
ルト「降りる時にひっかかって紐が取れてしまったんです。あの、(股のあたりの服を抑えて、膝を合わせるようにモジモジして)……どちらか、好きなほうでいいので(?)早く渡してください……、いま、履いてないんですから……。」
マヘス「(項垂れて長い溜め息を吐いた。顔を上げたときに、またチョット頭が当たってしまったかもしれない…)………“逆ラッキースケベ”って名前の能力でもついてンのか…?……ったく……(見上げたまま眉根をひそめた。瞳孔と黒目の境がわからない、泥のような目が上目遣いで見ている。)………。いやお前…、………。アー……(いちいち問答をしているよりはと気を取り直し、先程まではいていたほうをルトに差し出し、縞パンのほうはカソックにしまい込んだ。)……ほれ。」
ルト「……んっ……、(ひく、と小さく体が跳ねた。)なんですかそれ。……。ありがとうございます。(差し出されたにゃんにゃんパンツを受け取って、そのままじっと見つめて。少し気まずそうに。)……あの。いえ、まあいいか……。(きょろきょろと周りを気にして見た後、するりと足を入れてそれを引き上げた。引っかかってサイドの紐がちぎれたのか短くなっているが、上手く結んだ。おしり側の布のフチに両指をかけて整える。)……出来れば向こうを向いていて欲しかったですけど。」
マヘス「…………、(思わず漏れた小さな声と跳ねた身体に目を細めた。)………アホくせえ。忘れてくれ。(自分で言い出したラッキースケベ云々の話を静かに笑って誤魔化した。)………。………あ?………ああ、悪りィ。……けどよう、そもそも…だなァ?(そこで目を逸らした。)……もっと踏み込んだこと、シたろ?アレに比べりゃ……な?」
ルト「……………………(長い長い沈黙。少し俯いた視線で何度か瞬きをした。)あれは、必要に迫られて。あれはそもそもセ、……性行ではなく。貴方の欲を吐き出すために必要で。(下着を整え終わった手を前に持ってきて両手を重ねた。)」
マヘス「(同じように長い時間黙っていたが、ふうっと大きく息を吐いてようやく立ち上がった。膝のあたりを手で払って整える。)…………必要、か。……他のやつみてえなことはしたくないと言っておいて、結局俺は欲に負けちまってお前を、……………。(最後まで言いかけて口を噤んでしまった。少し顔を背けたその頬がなんとなく、なんとなくだが薄く赤に染まっているようで。)」
ルト「他の人と同じだったのでしょうか。神父様は本当なら男の子とはしないと仰っていましたが、その貴方が欲のままに私の身体を貪るなんて、……。(直前に自分で言ったことを緩やかに否定するような物言いをして、はっと口を噤んだ。)……私にも分からないのです。あのときの私は、どういう感情だったのか。(そわ、と不思議な感覚が背中を撫でるように駆け抜けて行った。その理由がわからず少しだけ首を傾げる。)」
マヘス「(顔を背けたまま少しの間黙った。)…………普段の俺は、お前も知っての通りだ。…とても誠実とは言えねえだろ?(自嘲気味にふっと息を吐いて笑った。その笑みは自分にも分からないと言ったルトの言葉にすぐに消えた。)………わからねえな、お互いよう。………。………まァ、その、……なんだ。(少し恥ずかしそうに後頭部を掻いて。)……お前が嫌だったとか、悲しいとか、そういうのじゃなけりゃ…………いいんだがよ?(ちら、とルトを見た。)」
ルト「(視線を感じて、見つめ返した。あの日の薄茶の瞳を思い出しているらしく、瞬きもしない。)不特定多数と関係を持つのが不誠実だとすれば、私も同じです。傷だらけになりながらも子供たちの笑顔を守る神父様は誠実な人でしょう。…… 貴方に必要と言われて、私は、嬉しかったのだと思います。……わからないというのは、その、頭が真っ白になって何も考えられなくて。だから、………………。(珍しく顔をふいと背け、両手同士を体の前でぎゅっと握ったままじっとしている。)」
マヘス「(背けた顔を戻した。ともすれば生気のないのっぺりとした瞳が、言葉に詰まったルトをじっと見つめた。)…………、…………そう、……か。(首を傾げた。困ったような薄笑いを浮かべたが、どこか納得はしたらしく。)…………お前が必要だ。今の俺は、ガキの相手すんのにも一苦労だからなァ。っはは……、(くまさんの絆創膏を貼られた手を見せて、おどけたように笑った。)………アー……まァ、なんだ。お前の言いたいこと、わかってねえかもしれねえが、わかった。だからこの話は終わりにしようぜ。耳の裏がくすぐったくて仕方ねえや。(本当にむずがゆいのか耳を軽く掻く仕草をした。)」
ルト「……そうですね、今ここで結論は出なさそうなので。(つられて、ややぼんやりした表情のままゆっくりと首を傾げる。)ただ、本当にあれが他の人と同じく欲を吐き出すためだけの行為だったのかわからないままだと、神父様も私もモヤモヤしたままになってしまう。だから、(目の前にいるマヘスに一歩近づいて、耳打ちをするようにして)……もう一度だけ、しませんか。」
マヘス「………………!(耳元で囁かれた言葉がきっかけなのか、くすぐったさを感じていたところに追い打ちをされた形になったからなのか、何かぞくりとしたものが全身を駆け抜けた。)…………ッ、は、………ァ!?(思わずルトの肩を握りそうになるのをぐっと堪える。)…………お前…………(どう言葉にすればいいのか迷い、見えない目を泳がせた。)…………それ、……マジで言ってンのかよ。」
ルト「………………?(その反応が意外だったのか、また首を傾げた。)……はい。……え、神父様は嫌ですか?(また一歩離れて、一欠片の悪意も感じられない澄んだ蒼い瞳でじーっと見つめた。ぱちくりと瞬きを繰り返し、返事を待っている。)」
マヘス「……………イヤ、………そういうワケじゃなくってな……?(きっと何の邪な気持ちも抱かずにまっすぐ自分をみているであろうその姿を想像し、片手で目元を覆った。)………………。(どう返事をしたものか、そのままの格好でしばし沈黙した。やがてずるずると目元を覆った手を下ろした。)…………嫌じゃねえよ。」
ルト「ならいいじゃないですか。そんなに驚くようなこと、ありますか?(落とした荷物の方へ歩いていって、本を拾い集めて重ねている。)……神父様の気が向いたらでいいです。どうせ隣の部屋に居るんですから。(整え直した荷物を持ち上げようとしている。)」
マヘス「お前のほうは何も思わねえのかよ!?……………、(動じることもなくさっさと次の行動に移るルトに呆れて溜め息を吐いた。やや遅れて後に続き、荷物の音を頼りに両手を差し出した。一緒に持つつもりが、ルトの両手に手が触れた。)………、………俺は待つのも、待たされるのも、嫌いだ。(そこだけはハッキリと言い切り、視線を動かさない。)」
ルト「……ええ、特には。 (手が触れて少し目を見開いた。どくんと鼓動が大きくなっていくのを感じて俯いて。)……今、ですか?部屋の片付けがあるので、すみません。(ぴく、と手が動いた。ほとんど何の反応もないままルトの姿だけが消え、転移魔術を使ったことがわかる。……が、荷物を持っていき忘れたらしく、一式全てそこに残された……。)」
マヘス「はァ!!?オマエそれはさすがに酷っ、…………!!(断られた上に転移までされて、思わず落っことしかけた荷物を抱き留めた。)………あンの野郎…、ずっと年下のくせにやりやがって……!今に見てろよ、ったくよオ……!(思わず苦笑いが漏れ、どこかギラついた目つきになるとぎりっと歯噛みした。カソックを翻すほどの風とともに、荷物ごと自室へ消えた。取りに来るまでは返さないつもりらしい……。)」
–Omake–
ルト「(俯いてふー、と細く息を吐いて。)今したいなんて言われると思わないじゃないですか……。……。……!? ……荷物……!!(ばっと顔を上げた後、隣の部屋の方を見た。恐らく荷物は持ち帰られてしまっただろうと察して。)あー…………。(頭を抱え、まだ片付いていない部屋のベッドに倒れ込み動かなくなった。)」