(イシスアセト王都から離れた、とある地方の山間部。大きな街からさらに山岳地帯へ進んだ先に、小さな町や村が点在している。そのうちの一つ、とある村から少し離れた開けた場所。設備の整えられたテントやキャビンが山の中腹に建てられ、宿泊地として使用されている。)
マベ「……………………。(テントの外で、じっと夜空を見上げている。黒を基調にした軽装で片手にハーフサイズの酒瓶を持っているが、先程から口をつけていない。)」
ミラ「(テントの中からひょこりと顔を出した)結構暗くなってきたねぇ。冷えてきたから上着とってきた。(のそのそ出てきた。明るい色のパーカーにショートパンツ、その下に黒いレギンスを履いている。)」
マベ「……………、(ほんの一瞬、反応が遅れた。振り返ると、普段より幾分穏やかな顔を見せた。)……あア、…そうだな。ここいらは日が落ちると急に気温が下がるんだ。風邪引かないよう気をつけろよ。(言いながら自分も黒眼鏡を外し、シャツの襟元に引っ掛けた。眼鏡を持っていた手で目元を軽く擦ると、また背を向けて空を見上げた。)」
ミラ「ん、大丈夫。ほんとに寒くなったら2人に挟んでもらって温まるから。(悪戯っぽく笑いながら、あいている椅子に座って膝掛けをかけた。)いつの間にかこういう季節になったね。…ねえ、温かいのまだ?」
ゲラルト「……ん、いるか?(すぐ近くで何か温めている。赤黒い液体から果物のいい匂いがする。)」
マベ「あァん…?(二人に、という点に気に食わなさそうな声を出したが本気ではなさそう。持っている酒瓶に口をつけ一口飲むと、ミラの側へ歩み寄った。)……そうだな。王都にいても季節を感じねえわけじゃないが、こんなふうにゆっくり空を“見る”なんて久しぶりだ。………。(鼻先を掠める甘い匂いに目線をやった。近くの椅子に腰を下ろすと、そっと目を閉じて物音に耳を傾ける。)」
ミラ「2人とも筋肉量多いから表面温度高いしね。ふふ。(冗談めかして笑いながら、傍に来たマベを見上げた。)王都にいると空みあげる機会なんてあんまりないんだよね。……あっ、私がチラッとリクエストしてたホットサングリアじゃん~。そーゆーとこさすがだね。」
ゲラルト「”サングリア”はどこかの国で”血液”という意味らしい。私が作るのもおかしな話だが。(耐熱のカップに注いで、ミラに差し出した。)……私たちは休み自体が珍しいからな。」
マベ「見上げたって星はそんなに見えねえだろうな。あっちは明かりも人間も多い…。…………お前が甘い物作ってるなんて珍しいと思ってたら、そういうことか。(目を開けてちらと二人を見た。片方の口の端を上げて笑ってみせて。)気が利いたジョークだな。俺にもくれよゲラルト、一口二口でいい。」
ゲラルト「チラッと…?私には脅迫じみて聞こえたが…?(もうひとつのカップにサングリアを注ぎながら。)珍しい休暇に、珍しくこんな風に呑気に過ごしているわけだ。甘い物を作るくらい些細なことだろ。(カップに入ったオレンジをひとつ指でつまみ上げて口に入れてからそのカップをマベに差し出した。)」
ミラ「そうだね。時間の流れも王都は違うって言うか、……たまにはいいよね、こういうのも。(2人を交互に見た。)…あ、ありがと。 んーあったかい。……。あれ?いいと思ってるの私だけじゃないよね?」
マベ「脅迫じゃァなくて“お姫様のご命令”だろ。(カップを片手で受け取って、少し眉間に皺を寄せた。)……お前、今俺のカップからなんか取って食っただろ。…まあいいけどよ。(礼代わりにカップを少し掲げてから唇をつけた。ミラの問いかけにカップを傾けたまま動きを止めて、少し考え。)………ン、…………。(ゆっくりと口に含むようにして飲み込んだ。)………悪くねえよ。俺は山育ちだからな…、………。(何か続けかけて、二人に視線を向けたが黙って目を逸らした。)」
ゲラルト「……悪くはないな。(酒の香りのするフルーツをもぐもぐと咀嚼しながら。同じこと言ったが、それは自分の作ったサングリアへのコメント……)私もミラも王都育ちだからな。こういう景色はあまり見た事がない。」
ミラ「そもそも隊長は年齢に桁に乗るまで星空眺めたことないでしょ? (暖かいカップを両手で包むようにして持ち。)平和だねー…、王都にいるときの緊張感全くないわぁ…。マベさんの家族も村の人たちもなんて言うか……余所者なのによくあそこまでしてくれるよね。」
マベ「…………。(顔は違う方を向いているが、二人のやり取りをじっと聞いている。村の話題が出ると目を細め、膝の上で手を組んだ。)………そりゃァ雲の上みてえな存在のウライオスの部隊長が来れば、こんなトコの連中でも色めき立つさ。……あとは、……マア……(どことなく落ち着かなさげに。どう言おうか迷って。)………お前みたいな綺麗な女連れて帰ってくりゃぁ、そりゃあな……。」
ミラ「女の人達みんな目がハートになってたの面白かったね。見た目だけはいいけど、中身みんな知らないから。(その光景を思い出し、おかしそうに笑った。) まあ、それは……、私じゃなくても大騒ぎでしょ。」
ゲラルト「(ちら、とマベの方を見た。自分についての話は聞こえていなかったみたいに丸っきり無視して)…ミラのことはなんて説明したんだ?お前はよく言葉を誤るからな…。」
マベ「まったくだぜ。所帯持ちの年増まで色めき立ちやがってよオ…男連中のあのカオといったらなかったぜ(こちらも同じ光景が頭に浮かんだらしく、く、と可笑しそうに吹き出した。)……………あーァ?……ああ。(ゲラルトの問いには気まずそうに首を傾げて。)………お袋には、まあ、…………………………………ソウイウ関係だって言ってある……。」
ミラ「え~?ソウイウ関係ってどういう関係?(にひ、と悪そうな笑顔を向けた。)マベさんの親だから「あの子とヤることヤったの!?」とか聞いてきてそうで不安になっちゃうよ。」
ゲラルト「少なくとも、すぐ村中には広まるだろうな。……色々苦労をかけるけど、あの子のことよろしく頼みます、だと。私ではなくミラに言うべきだな。(ふーと細く息を吐いた。ひんやりとしているが、その息が白くなるほどではない。)」
マベ「バッ、……!!(恥ずかしくなったのか勢いよく立ち上がった。)…………、……俺の家族はもっとまともな口の聞き方をする。……イカれてンのは俺だけだ。(ふっと自嘲気味に笑った。)………とはいうものの、お袋は見ての通りの“なり”だからな。もう村中噂でもちきりだろうよ。(溜息をつき、温かさの残るカップの中身を飲み干した。口の中に飛び込んできた果物を面白くなさそうな顔をして咀嚼して。)………あのババア、お前にそんなこと言ったのか?…………余計なこと言いやがって。(最後は小さな声で。)」
ミラ「普通に彼女だよって言えばいいじゃん。私は別になーんも恥ずかしくないけど。 お母さんから色々聞き出しちゃお。明日、近くにある露天風呂一緒に行こって約束したんだ♡ (ぱっと空を見上げた。あたりはすっかり暗くなっている。)……わあ。」
ゲラルト「職業柄、そう言いたくなる親の気持ちはわかる。もう何人も死なせてしまった私には重い言葉だが、 (ミラにつられて空を見上げた。)………綺麗だな。王都とはまるで違う。」
マベ「……あのなあ。こんなド田舎の辺鄙な村だとな?彼女=即結婚って頭の大人ばっかなんだよ。風呂で色々面倒なことずーーっと聞かれんのも厄介だろ?(と言いながらも、どこか照れ臭さを含んだ物言い。ゲラルトのほうには素直に申し訳なさそうな顔をして。)……気にしないでやってくれ。わかってねえんだよ、俺達の実情をよ。……………、(二人に倣って空を見上げ、その気温を確かめるかのように大きく息を吐いた。)……まだ一番空気の澄む時期じゃあねえが、…………綺麗だろ。王都の空じゃ見えない星も、流れ星も見えンだぜ?」
ゲラルト「いや、いいんだ。(そっと立ち上がって、2人から少し離れた所へ移動する。)願うことは、誰にも咎めらるようなことではない。(草原の上に座って、すぐにごろんと横になった。そのままじっと空を見上げている。)」
ミラ「あー。別に私は何聞かれてもうまく返すから、大丈夫だよ。仕事の詳しい話は絶対しないし……。(ゲラルトの動きを目で追い、少し驚いた顔をした。)……。 私もそれする!(ばっと立ち上がってゲラルトの隣にごろーんと寝転がった。)あ、結構背中冷たい……。(そしてぴたと隣の人にくっついた……) 」
マベ「……………ん。(複雑な表情をしていたが、ミラがゲラルトにくっついたのを見てムッとした表情になった。)………おい。……お、い。くっつきすぎじゃあねえかア?え??(言いながらミラの隣までやってきて、腰に手を当て立ったまま上半身を屈めた。)」
ゲラルト「おい、くっつきすぎ……(同じようなタイミングで同じことを言ってしまい、そこで黙った。)……。」
ミラ「そうかな? マベさんも隣来てよ。寒いから2人で挟んで。(覗き込んでくるマベへ手を伸ばした。)」
マベ「……………チッ。(不承知!と言いたげな顔をしているが無下にするわけにもいかず、手招きに応じて隣に腰を下ろし、ゆっくりと寝そべった。)……………。(普段そうしているように自然に寄り添い、また空を見上げた。)…………星。よく見えるか?」
ミラ「(隣に寝たマベの肩に頭をくっつけて、じーっと空を見上げている。)うん、よく見える。綺麗だよ。……こんな風にさぁ、仲悪い2人に挟まれて暖とりながら星空みあげる日が来るなんて思わなかったよ。王都での暮らしが嘘みたい。……私さ、……あっ、あっ、あー!!流れ星!!!!!(言いかけていた言葉を全部ぶった切って大きな声で叫んだ。)」
ゲラルト「おい、ミラ……(突然の大声に僅かに驚いて目を細めた。)……流れ星に願いを言えば叶うという迷信があるが、……出来たか? 今の一瞬で。(ふと空を上げ直すと、またひとつ光の筋を描いて星がひとつ降ってきた。)………。……流星群、か。」
マベ「…………そうだな。まさか俺もこんな風に、ッ…!(何か言いかけて大声に一瞬固まった。)…………、………あア。……来たか。(流星群という言葉に目を細める。)……そろそろかと思ってたが、……さすがに星の落ちてくる音は聞こえねえなぁ。(真顔で言っているので、冗談なのか分かりにくい。)…………願い事か。今のうちに言っとけよ、次いつ見られるかわからねえからな。」
ミラ「わー……きれい……、初めて見た……。えー願い事ねぇ。たくさんあるけど…(そのまま、星屑がいくつも降ってくるのをぼんやりと眺めていたが。)……次って、いつなんだろ。……。……、(は、と何か思いついたように短く息を吐いた。)ねえ。2人ともさぁ、手繋いでいい?」
ゲラルト「……。……。……(ミラの独り言のような短い問い掛けに、思わず黙り込んでしまった。)……私は、構わないが。」
マベ「(ミラの様子に心なしか嬉しそうにしている。その問い掛けに、二人のほうに顔を向けた。)…………ン?………おう。いいけど。」
ミラ「(に、と悪戯っぽく笑って片手ずつ2人の手を握って。)……おてて繋ごうねぇ。ふふ。(手を引き寄せ、自分の体の上に持っていく。2人の手を繋がせ、自分の両手をそのうえに被せた。そのままじっと空を見上げる。)……。……次の流星群も、3人で見られますように。」
ゲラルト「……おい、……おい。み、………………。(ミラの行動に否定的なことを言いかけたが、その先の言葉が聞こえてやめてしまった。この長い長い休暇の間、ミラの些細な願いを叶えてきたことを思い出す。その先にあるミラの本当の願いを知り、言葉が返せない代わりに同じように星空を見上げて少しの間黙った。)」
マベ「(引き寄せられた手が思ったより伸ばされて戸惑う。)………はっ?繋ぐってこういう意味かよ!?マジで…………、(まくし立てようとしたがミラの願い事に、空を見上げる横顔にはっとして大人しくなった。病室で聞いた彼女の本心を重ね、空を見上げた二人を少しの間じっと見つめる。そしてマベ自身も、ゆっくりと空を見上げた。)…………。…………。(どう口火を切ろうか、気持ちが先走りそうで、どこか切なげに目を細めた。)」
ミラ「…………祈ったって、神なんて居ないのにね。(ぽつりと最後に呟いた。)さむー… ねえ、テントで寝る時ってどういう陣営(?)になんの? やっぱり隊長が真ん中かな?(どうでもいい事を喋り始めた。)」
ゲラルト「……。(なにか思うところがありそうな雰囲気で、ふう、と長めに息をついた。)……どう考えても違うだろう。(と言いつつ、じゃあ誰が真ん中なのか少し考えたが。)私は外で待機だ。野外泊をする以上警戒は怠るべきではない。(ごく真面目にそう答えた……)」
マベ「(あの時もこうして手を握り互いの意志を確かめ合ったのを思い出し、ここに辿り着くまでの様々な出来事が頭をよぎった。)………。……いてもいなくても、祈るのは勝手だ。それでもし叶ったんなら、素直に喜びゃいいのさ。(ふっと笑って。)……オイオイ任務中と同じ行動すんじゃねえよ。幸い今夜はそうヤバそうなモンは近くにはいなさそうだし、ここは火の番なんて要らねえ。この並びで寝りゃァいいだろ?」
ミラ「私の願いはアンタらが叶えてくれんの。私が祈ったって仕方ないでしょ? (2人の手をムギュムギュしながら。)そだよ。隊長は何と戦ってんの?空気?」
ゲラルト「……空気とは戦っていないが、眠気とはよく戦っている。(冗談なのだろうが、ひとつも普段と変わりない声色で。)おいミラ、そろそろいいだろう? 私は男同士仲良く手を繋ぐ趣味は無いぞ…」
マベ「(ムギュムギュされてくすぐったくなり、目を細めてにやりと笑うのを堪えた。)………そーだな。お姫様の願いを叶えンのは、俺らの役目だ…。(そう言ってからふと真面目な顔になり、見えない流れ星を目で追った。)…おうゲラルトよォ。可愛い犬ッコロがお手してやってんだぞォ?ちったア喜べよ。」
ゲラルト「誰が可愛い犬だ?(急に手を引っ込めると、上半身を起こし、そのまま立ち上がってもともと座っていた場所へとさっさと戻っていってしまった。)」
ミラ「あ。もー……、(ぱっと上体を起こし去っていくゲラルトの後ろ姿を見ていたが、眉を八の字にして小さく笑った。)……ね、素直じゃないんだから。マベさんは何かお願いしたの?」
マベ「まったくだ。(大して気にも留めない様子で笑い、自分の両手を枕にして寝転がった。何を願ったのか聞かれると、少し目を逸らした。)…………あー、………まあ、な。俺も神だのなんだのは信じてねえが…、………ま。こんな機会滅多にねえからな。」
ミラ「そっか……。(横に手をついて、覆いかぶさるようにじっと見つめた。人懐こい笑顔で笑ったあと、身を屈めて唇を軽く重ねる。)…叶うといいね。マベさんの願い。(すっと離れ、急に立ち上がってゲラルトの方へ歩いていく。) ……ねえ、せっかくロマンチックに星見てたのにさー、勝手にそっち行かないでよ。」
ゲラルト「お前が手を繋がせたりするからだろう…。(呆れたような声色で言ったのが聞こえてくる。)それよりミラ、マシュマロ焼くか?」
ミラ「えー!焼く焼くー!ね、サングリアもおかわりちょうだい~!(小走り気味にゲラルトの方へ近づき、マベから声が遠ざかっていった。)」
マベ「…………、(触れるだけのキスに少しだけ驚き、さっさとその場を離れていくミラの後ろ姿を見送った。二人のやり取りに、濃淡のはっきりしない瞳を優しく細めた。)…………。………あいつ。何を願ったんだ。(疑問でも否定でもない言葉が口をついて出た、その答えを探すように夜空を見つめる。かつて見た星降る夜空をこの闇夜と重ね合わせ思いを馳せていると、不意に唇が動いた。)………願わくば、いつか遠い未来に、この穏やかな日々を思い出して笑い合えますように。…………。……………、(ほとんど唇を動かしただけで、微かに笑うような吐息を漏らすと、身体を起こしてしっかりと立ち上がった。)……おい、一人だけ願い事言ってねえ奴がいるじゃねーか。焼いたマシュマロ口に詰め込んじまうぞ?(おどけながら、このひと時を楽しむようにゆっくりと二人のほうへ歩いて行った。)」